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ミツカンが炎上した「そうめん論争」で日本人の“国語力不足”が露呈。「ゆでるのも手間」投稿に「簡単だろ」と言い返す地獄絵図

目の前しか見えていない人たち

 ですが、今回のそうめん・冷やし中華論争に関わった人たちは、知ってか知らずか問題の本質から目を背け、「そうめん調理の難易度」に着目してしまいました。  人間は自分のわかる範囲から情報を読み取り、徐々に知らない領域へと手を伸ばしていくものです。例えば「代数多様体上の連接層の導来圏については~」などと言われても、全くとっかかりのない文章は、読めません。  文脈というものがあります。どんな話だとしても、そこに至るまでの経緯があり、それらをすべて汲まなければ、正確な発言の意図は読み取れない。  そのため、芸能人や政治家の一言を切り取ったスキャンダルには、あまり意味がありません。前後の発言やそこに至る経緯、発言した状況などを加味しなくては、意図が不明瞭だからです。  逆に言えば、人は自分の知っている文脈の中でしか物事を捉えられません。今回の話だって、大本を辿れば『「そうめんでいい」と作らない側の人間が偉そうに言ってくれるけれど、そうめんだってゆでるのもひと手間あるのだ』という愚痴だったはずなのに、文脈理解が足りないがあまり「そうめんが簡単かどうか」と局所的かつ短絡的な見方しかできなかった。  さらに、これに乗っかった多くの人々も、文脈理解が足りていない人の意見など検討するに値しないのですから無視すればいいものを、まともに取り合ってしまった。  やはり大局的な視点が欠如しており、目の前の140文字を追いかけることしか考えられていない。

国語能力の欠如が騒動を大きくしていった

 私は、国語の問題を生徒に解いてもらうとき、必ず「傍線部だけではなく、傍線部を含む一文をまるごとチェックしなさい」と伝えます。作問者に恣意的に切り取られた一部分だけでは、正確な意図を汲めないかもしれないからです。  各発言やふるまいは、あくまで全体の中の一部分にすぎず、総体としての発言録の中でどのような立ち位置にあるかを精査しなくてはいけません。  だからこそ、我々ライターや記者は取材に行く際に、対象者の発言や著書、インタビュー記録を総ざらいして、今回の取材で得られた情報との整合性や一貫性をチェックします。  Xでは基本的に140文字までしかポストできません。その程度で、意図を余さず伝えきるのは、プロでも難しい。しかも、各ポストのつながりは、ユーザープロフィールに行かなければ明らかにならず、一人の人間の発言録が断片的にネットの海に浮かんでいる。  断片化した発言だけで全体を把握したような気になって、スキャンダラスな断片に一喜一憂しては、誰しもが闘争の中に身を置いている。  あまりにも不毛でしょう。  助詞の勉強、ことばの知識、文脈の理解。今回の騒動に加担してしまった方々は、様々な国語的能力が足りていませんでした。  ただ、それ以上に必要だったのは「全体を見渡す余裕」。勉強や知能の問題ではなく、一度リラックスできる趣味や場所、コミュニティを探して心の平穏を手に入れるのが先決かもしれません。 <文/布施川天馬>
1997年生まれ。世帯年収300万円台の家庭に生まれながらも、効率的な勉強法を自ら編み出し、東大合格を果たす。著書に最小限のコストで最大の成果を出すためのノウハウを体系化した著書『東大式節約勉強法』、膨大な範囲と量の受験勉強をする中で気がついた「コスパを極限まで高める時間の使い方」を解説した『東大式時間術』がある。株式会社カルペ・ディエムにて、講師として、お金と時間をかけない「省エネ」スタイルの勉強法を学生たちに伝えている。MENSA会員。(Xアカウント:@Temma_Fusegawa

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