【独自】父が残した「借金1000万円」が原因で風俗嬢に…一時は薬物中毒になった28歳女性が、以前より「生きやすくなった」と思うワケ
現在、性風俗店に勤務する美香さん(28歳)は、「家庭環境と違法薬物によって、精神を病んだ」と話す。一方で、「仕事で病むことはない」と明言する。彼女が過酷な業態でも自らを失わずにいられるようになった理由に迫りたい。
美香さんが生まれたのは大阪府。10歳以上も年の離れた兄が2人いる末っ子で、幼いころはねだれば大抵のものは買ってもらえたという。また、毎年グアムに家族旅行へ行くなど、豊かな暮らしぶりを想像させるエピソードもある。
「何がきっかけということはないのですが、学生時代はまったく自分に自信が持てませんでした。いわゆる“陰キャ”ですよね。内気で自分の意見が言えない自分が嫌でしたね。中学生のときも部活が強制加入だったので美術部に入ったけれど、幽霊部員でした。
思えば幼稚園のころから、人見知りがひどくてずっと泣いているような内向的な性格でした。唯一、わがままを言えて、受け入れてもらえたのが家庭だったんですよね」
これだけを聞けば、よくいる内弁慶。家庭環境にもまったく問題がないように思える。だが美香さんは首を振る。
「私が成長するころには、兄たちは独立して家にいません。相変わらず、父も母も私に対して甘いのですが、両親はずっと不仲でした。父が母の料理に対して『いつも似たようなものばかり作って』と嫌味を言えば、母は『こっちは飯炊きババアじゃないんだよ』と怒る。そんな感じのやり取りのなかで、2人とも私には優しい。ちょっと居心地が悪いですよね」
また、父親のこんな態度が家族の不協和音を増長させていたのだと美香さんは話す。
「私が生まれる以前、母は流産を経験しています。このとき、父に何度異変を訴えても、救急車を呼ぶなどの適切な処置をしてくれなかったようです。ほかにも、生活していくなかで『自分と美香はいいけど、母はダメ』というような扱いが散見されました。母の気持ちが離れていくのは当然だなと子どもながらに思っていましたね」
両親の不仲にくわえて、親戚との関係性が絡まることで、より複雑さを増した。
「母の体型が崩れたことについて、父方の祖母が『糖尿病なんじゃないの』と言ったり、父方の親戚からもいろいろな陰口を言われたことで、母は追い詰められていたように思います。そんな母が不憫でした」
美香さんが高校を卒業し、美容系の専門学校に進学したころ、彼女にとって晴天の霹靂ともいえる出来事が起きた。
「父が亡くなったんです。もともと病気がちな人ではありましたが、割合にすぐ亡くなってしまったんです。問題は、1000万円ほどの借金を残したことです。大半は身内から借りたお金でした。母は父の死後、自分の所持品売って、それでも足りないので母の持ち家だった実家を手放すことにしました。だから私は、19歳で父を亡くし、実家も失って母と2人暮らしになったのです。母はストレスからか、自分で自分の髪の毛を抜いたり、チラシの裏に愚痴を書くようになってしまいました」
まったく知らされていなかった借金の存在が明らかになると、残された家族には悩みが増えた。
「返済もたいへんそうでしたが、それ以上につらそうだったのは、母が『どうして借金をしたのか、結局聞けないまま死んでしまった』とこぼしていたことです。父の葬式には父方の親戚も来ましたが、これまで母に対してつらく当たっていたにもかかわらず反省した態度もなく、非常に不愉快に思いました」
専門学校を卒業後、美香さんは映画のヘアメイクの仕事をしていた。ただ、常時現場を任せてもらえるわけではないため、並行してアルバイトをするほど多忙を極めた。
「緊張感のある現場で、答えのない仕事なので毎日試行錯誤で、精神的に苦しかったです。しかしコロナ禍に入り、撮影などがストップする時期が続いたんです。収入もなくなるので、いわゆるガールズバーなどの夜職を経験しました。パパ活アプリも登録しましたが、当時の私は性を売る勇気がなく、食事だけでお金をくれる男性はほとんどいませんでした。ほぼ唯一、身体の関係なしでお金をくれていた男性から好意を寄せられてしまって……。結局、身体の関係ができないからと向こうから終わりにされてしまいました。その後、『嫌なら辞められるのだから』と風俗業界に飛び込むことにしたんです」
※一見恵まれた家庭環境に育ちながら、やむを得ず風俗業界へ入る決断を下した美香さん。経済的な逼迫と家族の事情が、彼女の選択と葛藤を形作ってきたのである。有料記事後編では、自傷衝動や自殺未遂という深い谷をどう乗り越えたのかを描く。母との関係や「生き続ける理由」が彼女にもたらした変化とは(残り:1855文字、写真:19枚)
ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki

美香さん


