更新日:2025年09月04日 18:36
スポーツ

「大谷ファンの高齢者にとっては絶望的」WBCの“Netflix独占配信”で失われる「スポーツ観戦の熱狂と一体感」

お年寄りにとって有料放送は「おっかない」

 月額900円余りのNetflixなのだから「入会すれば良い」という意見も多く見られ、それはもっともな意見だと思う。インターネット放送ならば「見逃し配信」を見ることも容易になるだろう。  とかく野球は、試合時間が長く、「間」の多いスポーツだから、余分な部分を早送りしながら見ることもできる。既に入会している人は、NetflixでWBCが配信されることを歓迎していることだろう。  しかし、お年寄りにとっては、NetflixでWBCを観戦することのハードルはとても高い。  私の義母は70歳後半であるが、今やすっかり大谷翔平に夢中だ。しかし彼女が、Netflixユーザーになれぬだろうことは容易に想像できる。歳をとってしまうと、有料メディアはとても「おっかない」ようだ。

有料放送による“一体感喪失”のリスク

   また、不便に思える電波放送だからこそ、より多くの人が同時に試合を見ることになるのではないか。人々が、都合を優先させて、生放送を見るから熱が生まれるのだ。  スポーツ放送は、テレビが誕生して以来、民衆に一体感をもたらしてきた。その一体感が、社会を前進させる大きな原動力になってきた。しかし、見たいスポーツをカネを払って見ることは、これからの時代において、どんどん常識化されていくことだろう。  共通のヒーローを失った社会に、私たちはどんな未来を見いだせるのだろうか。  それにしても、シェア拡大のために、新興メディアが民衆の不満を承知で独り占めしたコンテンツが、オールドメディアの象徴である「日本野球」というのも、今の世の中の世知辛さをよく表しているように感じる。 文/椎名基樹
1968年生まれ。構成作家。『電気グルーヴのオールナイトニッポン』をはじめ『ピエール瀧のしょんないTV』、週刊SPA!にて読者投稿コーナー『バカはサイレンで泣く』などを担当。KAMINOGEにて『自己投影観戦記~できれば強くなりたかった~』を連載中。Xアカウント @mo_shiina
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