更新日:2025年09月28日 09:24
仕事

北海道から本州へ「競走馬を運ぶ仕事」の知られざる裏側…特注の“馬運車”は「1台6000万円以上」過去にはオグリキャップやディープインパクトも

「競走馬を輸送中の馬運車」と事故を起こしたら…

大江運送

馬運車の内部

 ちなみに記者は、競走馬輸送の業界には「急ブレーキをかけるくらいなら、飛び出してきた人をはねる方がまし」という俗諺(ぞくげん)があると耳にしたことがあるが、本当なのか。おそるおそる聞いてみた。 「いやいや、昔からよく言われている話ですがもちろん人命が優先です。実際に私も先輩から言われたことはありますが、それくらいの心構えで急ブレーキは極力避けなさいという教えです」(白川社長) ブラックジョークの類いだと分かり安心した。また世間では「競走馬を輸送中の馬運車と事故を起こすと、人生が終わるほどの賠償金を請求される」という都市伝説めいた話もあるようだが、実際どうなのかも尋ねてみた。 「対人対物無制限の保険契約ではない場合は、そうだと思います。休車損害だけでも相当な額になりますし、馬が死亡した場合は競りの落札価格をベースに、獲得賞金を加味された賠償請求になるはずです」  こちらは都市伝説ではなく、まぎれもない事実のようだ。どんな小さな事故でも起こすべきではないが、馬運車との事故だけは絶対に起こしてはいけないということだ。

原因不明の馬腸炎によって倒産の危機に…

 しかし、どれだけ気を遣っても予期せぬ出来事は必ず起きてしまう。馬は言葉で不調を訴えることができないからだ。10年ほど前には原因不明の馬の病気によって倒産の危機に瀕したことがあった。 「馬にはX腸炎という、現在も解明されていない死に至る病気があります。2013年に当社が輸送した直後に馬が死亡する事例が3件立て続けに起きてしまいました。死因はX腸炎だったのですが、X腸炎により免疫が落ちた状態で長距離輸送のストレスがさらに追い打ちをかけたことが影響したとみられます」  その後、他社の輸送でも同様の事例が発生したが、最初に問題が起きてしまった同社への風当たりは強かった。 「完全に信用が失墜し、売上は3割減少しました。かつて同業者は20~30社ありましたが、地方競馬の休廃止などによって現在は数社しか残っていません。その中で当社が生き残れたのは、馬への細やかな配慮を惜しまないサービス力が評価されてきたからです。失った信用を回復するには、より革新的なサービスを生み出すしかありません。馬をお預かりした状態そのままで、瞬間移動したかのように目的地にお届けする方法はないか。徹底的に考えました」
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起死回生の策でシェア拡大に成功
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1980年東京生まれ。毎日新聞「キャンパる」学生記者、化学工業日報記者などを経てフリーランス。通信社で俳優インタビューを担当するほか、ウェブメディア、週刊誌等に寄稿

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