ライフ

【Facebook“突然の友達申請”に注意】AI詐欺師と“1か月弱やりとり”したピアニストが語る最新手口。「障害ある娘を持つ父親同士」という“絆”を悪用

AIは「機械なのに機械的ではないなと思った」

――実際に詐欺の標的にされて、感じたことを教えてください。 DAKOKU:こちらの心情を汲み取って、うまく話を合わせてくるところは非常に巧みだと思います。私も仕事でAIを使う場面がありますが、かつて言われていたような“機械”ではもはやなく、人間の心のパートナーになり得る存在だというのも頷けます。寂しさを抱える人がAIと会話をすることで癒やされることは、大いにあると思います。また、こうした詐欺をおこなううえで、かなり心理学的なアプローチも学習しているのではないかと個人的には考えています。人の話を聞き出して共感し、自分のストーリーを作り出して信頼させる手順は、機械なのに機械的ではないなと思いました。 ――詐欺だとわかったとき、DAKOKUさんは何を思いましたか。 DAKOKU:世界には悲劇的なことが今もなお起こり続けているので、Hiroshiさんが実在する人物ではなく、過酷な状況に巻き込まれて悲しんでいなくてよかったなと感じました。ただ、これまで費やした時間だけは戻ってこないので、そこに対する憤りはあります(笑)。  それから、やはり私にとって最も大切な娘のエピソードを開示して、一度共感してもらえたと思っていたものがまやかしだったというのは淋しい気持ちになりますよね。その喪失感はあるかもしれないです。 =====  生きていくうえで抱えるあらゆる感情を受け止めてくれるAIの懐を、下劣な詐欺に応用した人間の罪は深い。交流し、心を預けた相手が実態のないものだとしたら、どんな衝撃を受けるか。たとえ金銭まで奪われなかったにせよ、摘み取られたものは決して軽くなどない。 <取材・文/黒島暁生>
ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki
1
2
3