更新日:2025年09月18日 09:35
仕事

「就職氷河期世代は不幸、と煽られすぎです」もう氷河期支援はいらないと、雇用のプロが言い切る理由

氷河期世代の大卒は、大半がもう正社員になっている

江夏:ただ、その“しわ寄せがいった”大学の学生も、なかなか中小企業には来てくれないんですよね。氷河期も含めて、大卒は常に求職数より求人数のほうが多くて、中小企業はいつも人手不足を感じている。企業と学生をもっとうまくマッチングして、キャリア初期の無業や非正規の状態を短くする余地はあったと思います。 海老原:そうなんです。氷河期で就職できなかった人も、その後、正社員になった人が多い。2000年卒の大卒男女で計算したら、無業・フリーターのうち、約75%が30代前半までに正社員就職してるんです。40歳だと85%になります。それも、男性だとその割合は9割を超えるほどで、もう他世代と何ら変わりありません。 「氷河期世代は、非正規を転々として熟年フリーターが大量にいる」というイメージが煽られすぎですよ。なぜ、運動家の方たちはこのイメージばかり言うんですかね? 江夏:私に運動家の方たちの思惑はわかりませんが。日本の雇用市場は実はけっこう流動的で、昔から転職も多い。学卒の段階でのキャリアが、その後もずっと引きずられるわけではないです。現職への不満を理由にした、年収が下がる転職がそれなりに多いのが、辞める側と辞められる側双方にとっての課題ですが。

非正規問題は、女性と非大卒に行きつく

海老原:なのに「新卒でダメなら、ずっとダメ」だと誤解されている。 ほぼ氷河期世代にあたる1971~75年生まれの男女(全学歴)で、40~44歳時点で非正規就労の人って220万人いるんです。「220万人も!やっぱり氷河期世代は悲惨」と早合点されますが、その内訳はどうか? 非正規内訳非正規220万人のほとんどは女性なんです。183万人は女性で、うち142万人は“パート主婦”(有配偶女性)。「主婦だから問題ない」わけでは全然なくて、そこは本に詳しく書きました。一方、大卒男性はたったの8万人、3.6%ですよ。多くがもう正社員になっているから。で、非大卒の男性は29万人です。 大半が女性ということについて、田中さん、いかがですか? 田中:女性の働き方の価値観も多様なので、「悲劇的な氷河期世代だから」と一括りにされるのは違うと思います。女性の就労継続について調査をしたことがあるんですが、非正規であることを悲観的に捉えてない方が多かったんです。正社員で縛られて働くよりも、自分で働き方を選んでいると。 その背景には、「結婚して育児をして家庭を守るのが、一番素敵な生き方」みたいな、ずっと刷り込まれてきた価値観があるわけですけれど。 海老原:氷河期世代だと、まだ、“男のために尽くせ”と刷り込まれてきた世代だから、かわいそうですよね。
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政府の目線が「大卒男性」に偏っている
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「就職氷河期世代論」のウソ

詳細なデータが解き明かした、意外すぎる氷河期世代の実像とは?