更新日:2025年09月13日 16:30
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“生まれつき弱視”の慶應生がショックを受けた、大学での出来事「差別意識を隠そうともしない人たちが思ったよりも多い」伝えたいメッセージとは

IT先進国エストニアでしたかったこと

――さらに高校のときは、IT先進国に武者修行に行ったと伺いましたが。 鈴木我信:そんな大げさなものではないのですが(笑)。高校時代は、視覚障害のある子どもたちを対象とするiPad活用セミナーを主催したり、視覚障害をシミュレートできるアプリを開発したりしました。そんな折、エストニアがIT先進国だと聞いて、現地を訪れたくなったんです。 というのも、当時、日本のマイナンバーカードは顔認証システムが搭載されていましたが、私の目を認識してくれなかったんです。そのため、私は顔認証システムが使えませんでした。一方、エストニアでは婚姻や離縁もWEB上で完結するという話を聞いて、ぜひ電子政府の専門家に話を聞きたいと思ったんです。 ――それで、実際に会えたのでしょうか。 鈴木我信:はい、会ってくれることになって。フィンランドとエストニアあわせて1週間程度の滞在でしたが、いろいろなことを学ばせてもらいました。兄と母がついてきてくれたのも、心強かったですね。

友人から「君がいてくれてよかった」

――大学進学に際して慶応義塾大学のSFCを選んだのはどうしてですか。 鈴木我信:SFCは多様な人たちが混ざり合い、それぞれを尊重して学べる環境だと考えたため、志望しました。多様というのは、文字通り人種の多種多様さもそうですが、障害をもつ人も多くいますし、受け入れる土壌のある学部だと考えたからです。 ――まだ入学から数ヶ月ですが、入ってみてどうですか。 鈴木我信:ショックだったこともあれば、「さすがSFCだ」と感動することもありました。印象的だったのは、大勢の受講生をいくつかのグループにわけて議論する授業です。あるとき、その講座を担当する教員のひとりである小児科医の先生といっしょに、「もし自分の子どもが障害を持っていたら」というテーマでディスカッションをすることになりました。各グループで話し終えたあと、それぞれのグループで出た結論を代表者が発表するという形式です。議論は、出生前診断にまで及びました。  あるグループの代表者が少し笑いながら「(出生前診断をして)障害があるとわかっているのに生むなんて、たいへんな人生を歩むことが明白なのに、正気じゃない」という趣旨の発言をしていたのが強く残っています。  しかしすぐに先生が、「障害があることがたいへんだというのはあなたが思っていることでしょう。どんな人でも安心して暮らせる社会を目指さないとね」と窘めていて、救われる気持ちにもなりました。また、大学で知り合った友人のなかには、「最初は正直、『なんで目の色がグレーなんだろう』と思ってたけど、理由を知ることができてよかった。君がいてくれてよかった」と言ってくれる人もいて、知ろうとしてくれることの嬉しさを感じます。
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子どもに対して「見ちゃダメよ」ではなく…
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ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki
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