更新日:2025年09月13日 16:30
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“生まれつき弱視”の慶應生がショックを受けた、大学での出来事「差別意識を隠そうともしない人たちが思ったよりも多い」伝えたいメッセージとは

腹立たしくはないが、ショックを受けた

――グループディスカッションでひとりの学生が放った言葉は、強烈ですね。 鈴木我信:そうですね。その発言者個人が悪いとか、腹立たしいとはまったく思わないんです。ただ、まがりなりにもこれから日本の中核を担う人材を多く輩出するであろうSFCにおいて、差別意識を隠そうともしない人たちが思ったよりも多くいることに、ショックを受けました。そうした人たちが考え実行する政治は、弱者に対して非常に冷たいものになるのではないかと思ったんです。だからこそ、ショート動画というエンタメの力を借りて、障害を多くの人にとって身近なものにしていきたいですね。

子どもに対して「見ちゃダメよ」ではなく…

鈴木我信

若い世代に対して障害について考えてもらう機会を創出したい

――社会に生きる私たちができる心がけのようなものは何かあるのでしょうか。 鈴木我信:非常に難しいですよね。たとえば電車などでよく遭遇するのは、小さい子どもが私を見て「あの人、目がへんだよ」みたいなことをお母さんに言う場面ですね。そのときに、「だまりなさい」とか「見ちゃダメよ」みたいな反応をするのではなくて、世の中にそういう障害があることをわかりやすく伝えてほしいなとは思います。 小さい子が疑問を口にしてしまうのは仕方がないですから、せめて覆い隠さずに、障害がある人も社会で生きているというのを教えてあげてほしいですね。隠してしまえば、それが差別意識の種になっていくように思うんです。 ――今後、鈴木さんが目指す方向はどのようなものになるでしょうか。 鈴木我信:私自身まだ大学に入学したてで学ぶことも多い身なので、あまり壮大なことは語れないと思うのですが、漠然としたものならあります。テクノロジーを使って、若い世代に対して障害について考えてもらう機会を創出したいですよね。 障害の当事者が身近にいない環境で育てば、障害者について考えなくなるのも理解できなくはないんです。だからこそ、かしこまった媒体ではなく、リラックスして見られる動画などを発信し続けることで、障害者の置かれた状況を伝えていけたらと今は思っています。 =====  鈴木さんの行動力の根源にあり続ける、「社会をよりよく変えていこう」という意気込み。健常者も障害者も社会の乗組員として平等にとらえ、困りごとを解決するための提案をフラットに行う。彼の目からみえる光景は愉快なことばかりではなかったはずだ。けれどもインタビューの最後、彼は「絶望はしません」と笑った。あるべき社会を作ろうと挑む者の顔だ。そしておそらく、彼は滾る知性でその道を切り開いていく。 <取材・文/黒島暁生>
ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki
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