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「自分の浅はかさを今でも強く悔いる」コロナワクチン接種後の死亡報告2,295件、医師たちのドキュメンタリーが問う“科学の本質”

利益が不利益を上回れば接種

©「ヒポクラテスの盲点」製作委員会

――劇中で「利益が不利益を上回れば接種を実施」ということを武見敬三元厚生労働省大臣が言っています。一方、福島医師は著書で「リスク(不利益)/ベネフィット(利益)」については「疾患の特性・病気・病態・予後・年齢などをふまえて個々の患者さんごとに決定する」、「因果関係論でリスクを切り捨てない」、「厚生労働省と連携を取りながらそれぞれの立場で薬害防止のために議論する」等の主張をしていますが、これら緻密な検証ができない理由について取材を通して感じたことがあったのでしょうか。 大西:例えば今回、尾身茂さんをはじめとするパンデミックに対する専門家委員会が組成されましたが、その後の本や資料を読むと、コロナ対策の各論点について委員会の中でも様々な意見があり、議論があったことがわかります。 しかし、方針を最初に決めるのは政府です。政府が「右だ」と決定したとして、それに対して専門家委員会が「左だ」と言い続けることは難しい。それが権力、国家運営の現実だと思います。不測の事態では、科学的な正しさを導き出すことだけでも難しい上に、それを臨機応変に政策に反映させることの困難や限界は、今後の大きな課題だと思います。

「感染・発症」予防効果から「重症化」予防効果へ

――厚生労働省発表のワクチン接種の根拠は2022年の夏あたりから、「感染・発症予防効果」から「重症化予防効果」にシフトしています。 大西:2021年末に2回目接種が終わる頃には1000件を超える死亡報告がすでにありました。ただ同時に、PCR検査による陽性者数が接種者において減るなど、2回目摂取までの時点では「コロナワクチンが効いている」可能性を示すデータも、厚労省は得ていたと考えられます。 ただし、その後に続くブースター接種、つまり3回目接種以降はコロナワクチンを打ったところで、そんなに感染予防効果はないことが段々と明らかになってきました。その頃から「入院予防効果」や「重症化予防効果」に重心が移った。つまり、「感染予防」「発症予防」の効果について明言せずとも、「重症化予防」「入院予防」効果はあると。24年の9月時点でも厚労大臣は明言していて、今でもその姿勢は崩していません。重症化予防は、コロナワクチンの有効性の「最後の砦」だと感じます。 ――定期的に厚労大臣の会見を聞いている記者の人たちは政府の発表の表現が変わったことには気が付かなかったのでしょうか。 大西:批判的意識、懐疑の精神を持って記者会見を取材している記者は限られるのかもしれません。 フリーランスの記者たちは、毎回、会見で鋭い問いを投げかけており、その様子はYoutubeなどでは見ることができますが、それがテレビや新聞で報じられることは、ほとんど全く無いというのが現状です。 「なぜ大手メディアがワクチンの負の側面に取り上げないのか」については、現実にはとても複雑なレイヤーがいくつもあると思いますが、検証が必要です。映画内でも触れられていますが、報道機関におけるヒエラルキーが障害になっているということは確実なのではないでしょうか。現場の記者が何か異変に気づいても、ニュースとして世の中に伝えられるまでには、いくつかの段階を超えなければなりません。一度二度跳ね返されるうちに、「どうせ書いても通らない。そんな空気が醸成されていった」とは実際にある記者から聞いた言葉です。 組織の上層部にとっても、「国が進めている方針が正しい」としておく方が、波風が立たないし、経営リスクも小さいと感じるのではないでしょうか。
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医師を突き動かすもの
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ライター、合同会社インディペンデントフィルム代表社員。阪南大学経済学部非常勤講師、行政書士。早稲田大学法学部卒業。行政書士としてクリエイターや起業家のサポートをする傍ら、映画、電子書籍製作にも関わる。

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『ヒポクラテスの盲点』
企画・監督・編集:大西隼 撮影:井上裕太 音楽:畑中正人 CG:高野善政 プロデューサー:杉田浩光 杉本友昭 大西隼
出演:福島雅典(京都大学名誉教授) 藤沢明徳(ほんべつ循環器内科クリニック理事長) 児玉慎一郎(医療法人社団それいゆ会理事長) 上田潤 大脇幸志郎 上島有加里 宜保美紀 佐野栄紀 新田剛 楊井人文
製作:「ヒポクラテスの盲点」製作委員会 制作・配給:テレビマンユニオン
助成:文化庁文化芸術振興費補助金(日本映画製作支援事業)独立行政法人日本芸術文化振興会
2025年/日本/110分/ステレオ/16:9  (C)「ヒポクラテスの盲点」製作委員会
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