物乞いより衝撃!次はドラッグ密売人
北川はここ1年、汚れ役に挑んでいる。主演したフジテレビ系の春ドラマ『
あなたを奪ったその日から』では誘拐犯だった。
娘を食品アレルギーで失った中越紘海役。アレルギー物質を混入させた惣菜店社長・結城(
大森南朋)の愛娘・萌子(
倉田瑛茉)を復讐としてさらう。しかし危害を加えることは出来ず、一緒に暮らした。やがて我が子のように愛すようになった。
汚れ役とはいえ、救いがあった。現在は物乞い。そして次はドラッグの密売人である。11月28日公開の主演映画『
ナイトフラワー』で演じる。段々とエスカレートしているようだ。
演じるのは2人の子供を持つシングルマザー・永島夏希。借金取りに追われる日々を送っている。この物語でも北川が演じる役空には金がない。昔も今も金がないのは恐怖でしかない。
夏希は昼夜を問わず汗だくで働く。それなのに食べるものにさえ困る日々。ある日、夜の街で偶然ドラッグの密売現場に出くわしたことから、金になると思って密売人になることを決意する。地獄の釜のフタを開けてしまった。
監督は
内田英治氏。
草彅剛(51)の主演映画『
ミッドナイトスワン』(2020年)を撮った人だ。容赦ないリアリティで知られる人だから、夏希は極めつけの汚れ役になるだろう。
北川はどうして汚れ役に拘っているのか。美人俳優の殻をぶち破ろうとしているのだろう。美人は俳優としてはあながちプラス面ばかりではない。
まず役が狭まりがち。顔で目立ってしまうから、普通の人がやりにくいのだ。観る側も顔ばかり注目してしまう。美人女優を一度捨てないと上に行きにくい。
今や押しも押されもせぬ大女優の
松坂慶子(73)も30代に入るまで演技を評価されることが少なかった。転機となったのはTBSの主演ドラマ『
水中歌』(1979年)。父親の借金を返すため、高級クラブでドールシップ(バニーガール姿で歌う女性)をやったり、男性に蹂躙されたり。この役によって美人女優のイメージが吹き飛んだ。
翌1980年には松本清張作品の主演映画『
わるいやつら』で救いようのない悪女を演じた。男を手玉に取り、人を殺させ、金を奪う女だった。最後は殺される。
そんな汚れ役は映画『
道頓堀川』(1982年)で結実する。淋しく哀しい小料理屋の女将役が絶賛された。同『
椿姫』(1987年)でのタクシー運転手と結ばれる薄幸な芸者役も高い評価を獲得した。美人女優の殻を破らなかったら、大女優になれたかどうか分からない。
やはり美人女優と呼ばれていた
故・夏目雅子さんも自ら志願して映画『
鬼龍院花子の生涯』(1982年)で遊郭の養女役を演じた。決め台詞は「舐めたらいかんぜよ!」。主演は夏目さんとこのほど他界した養父役・
仲代達矢さんだった。夏目さんもまた称賛を得た。
いくら汚れ役をやろうが、演技力がないと大女優への道は拓かれない。その点、北川には演技力がある。
実は当初、北川がアイドル的女優の1人に過ぎないと思っていた。しかし初期の代表作である主演映画『
Dear Friends』(2007年)を観て考えが一変した。
役柄は金持ちのわがまま娘。夜遊び放題の女子高生役だった。クラブに行き、一番目立つことを目指していた。くだらない10代だった。
それが、がんに罹り、入院し、子供や幼なじみが亡くなったり、四肢不自由になる中で、変わっていく。生きることの意義を知る。北川の演技は全編、自然だった。