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世界最悪級の治安「入ったら15秒で死ぬ」ヨハネスブルク・ポンテタワーに女性記者が潜入!そこで見た意外な光景とは

リノベで刷新、子どもたちのはしゃぐ声!

 そんな「高層スラム」の歴史を脳内で反芻しながら、ラビレさんに連れられて建物の51階へ向かう。軋む鉄柵の扉を開けると、その先にもう一枚、扉があった。まさかの、防犯用二重扉だ。  さすがにギャングはもういないだろうと思いつつ、少し身を固くして中に入ると……。そこは、綺麗に片付いたパーティールームだった。酒が並ぶバーカウンターもある。「犯罪者の巣窟」のイメージとはほど遠い、現代的でスタイリッシュな空間だ。
パーティルーム

現代的な雰囲気に改装されたバーカウンター付きのパーティールーム

 いまはここで毎週末、沈む夕日を見ながらカクテルを楽しむバーイベントが開かれている。ラビレさんは「あなたもなにか飲む?」と冷蔵庫から飲み物を取り出してくれた。  建物の中は阿鼻叫喚かと恐れ慄いていたので、若干拍子抜けするとともに安堵感が広がる。そして見てほしい、この眺望を!
ヨハネスブルク

ポンテタワーから望むヨハネスブルク市内

 ラビレさんは、2000年代に犯罪の温床だったポンテタワーに転機が訪れたと話す。現在のオーナーが建物を取得すると、何年もかけて犯罪者を追い出した。また「ごみ溜め」だった部分も3年半かけて掃除。重機は入れられなかったので手作業で綺麗にしたそうだ。
コア

現在はごみが撤去された「コア」部分

 2012年にポンテタワーは生まれ変わって再びオープン。いまは中流階級向けの住宅として利用されている。住人は約2,000人で、ラビレさんのガイド仲間3人もこのビルで暮らす。ちなみに、高層階の一部は宿泊施設になっていて泊まることもできる。スーパー、美容室、柔道教室に、子どもたちのための遊び場も作られた。このツアーの最中も、子どもたちがコロコロと笑いながら私たちの脇を何度も走り抜けて行った。


「ここに人々の暮らしがある」地元出身ガイドの思い

 案内してくれたガイドのラビレさんはこの建物から5分のところに住む地元っ子だ。もともと観光に興味があり、高校卒業後「地元出身だから伝えられることがあるはず」と近所のポンテタワーでガイドを始めた。  地元出身のラビレさんにこんな質問をぶつけるのも不躾かと思いつつ、これを聞かずに帰るわけにはいかない。意を決して投げかける。「日本ではここは『入ったら15秒で死ぬ』と言われる場所なんですが、これについてどう思いますか?」  ラビレさんは聞かれ慣れているのか驚く様子もなく、ちょっと笑いながらこう答えた。「日本の皆さんに伝えたいのは、『15秒で死ぬ』なんてことはないんだよということです。ここにはちゃんと暮らしがあって、人々がいて、子どもたちもいて、みんな幸せに過ごしている。ぜひ自分の目で見にきてもらいたいです」
子どもの遊び場

現在のポンテタワーには子どもの遊び場もある

 そんなこんなで「15秒で死ぬ」ビルに2時間半にわたって滞在したが、命の危険は全くなかった。むしろここに暮らす人たちの声を聞き、力強く生活を営む姿を目の当たりにして、生きるパワーをもらって帰途についた。
ダンス

ポンテタワーの一角でダンスする地元の男性たち

<文・写真/神谷美紀>
南アフリカ・ヨハネスブルク在住。元テレビ局報道記者。専門は政治・経済・ジェンダー。食、映画、アートにも関心がある。コーヒーをこよなく愛し、執筆文字数とコーヒーの消費量は常に比例する。最近のマイブームはテレビゲーム『塊魂』。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」会員。
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