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「老いるとは、今を楽しむ特権を得ること」若者には不可能な老後の“幸せな生き方”とは

考え続けていれば新しい発見が必ずある

考える中年女性 いろいろなことを調べたり勉強したりして、日々頭を使っていると、いわゆる「思考実験」のようなことも無意識にできるようになります。  思考実験というのは、単に空想を楽しむ遊びなどではありません。頭の中で「もしこうだったら?」とシナリオを自由につくり、それを突き詰めていくことです。  シナリオの設定は完全に自由なので、現実にはあり得ないような状況をあえて想定してみることもできます。  「もし人間が眠らなくても生きていけるとしたら社会はどう変わるか?」とか、「もしお金という仕組みが存在しなかったら、働くことの意味はどうなるか?」といった、極端な問いを立ててみたっていいんですよ。  そして、そこから本質的な気づきや発見にたどり着くことは、決して珍しくありません。  実際、歴史を振り返ると、世紀の大発見の裏側には必ずと言っていいほど思考実験がありました。  ガリレオは「もし摩擦がまったくない場所で物体を転がしたらどうなるか?」と頭の中で考えることで慣性の法則に近づき、ニュートンも「もし水平に充分遠くに石を投げれば、地球の周りを回るのではないか」と想像することで万有引力の発想に至ったと伝えられています。  アインシュタインも、若いころに「もし光に限りなく近い速さで走る電車に乗ったら世界はどう見えるだろう?」と考え続けたことが、特殊相対性理論というそれまでの常識を覆す科学的大発見につながったのです。  つまり、思考実験というのは単なる空想遊びなどではありません。当たり前だと思い込んでいた前提を揺さぶることで、本質を掘り当てるための強力な手段でもあるのです。

思考を止めるから日常が色褪せてしまう

 私自身、少し前までは「南海トラフ地震が現実に起こったあとの日本はどうなるのか?」について考え続け、そこから見えてきた対策を本にまとめたばかりなのですが、ここ数か月は「人はなぜ働かなくてもいいのか?」という新たな問いについて、あれこれ考え続けています。  誰もが当たり前に「働かなくてはならない」と思い込んでいますが、あえて「働かなくてもいい」と仮定して考えてみると、いろいろな矛盾や社会の本質が浮かび上がってきて、働くというのは要するに誰かにピンハネされることだというのが見えてきました。  そこから「働く必要なんかない」という結論に至りました。それに関しては改めて本にまとめるつもりなのでここではこれ以上詳しくは書きませんが、そういうふうに自由にあれこれ考えを巡らせること自体が私にはとても楽しいのです。  考えることをやめない限り、人間は年齢にかかわらず新しい世界を発見し続けられます。  逆に考えることをやめてしまえば、毎日は一気につまらなくなるだけでなく、今理解していることがこの世のすべてだという錯覚に陥りやすくなります。  そうなると、自分にわからないことは最初から存在しないものとしてリジェクト(拒絶)して、未知の考え方や新しい価値観に出合う機会を自ら閉ざすようになっていきます。  やがては、自分と違う意見や世代の感覚を受け入れられなくなり、若い人や周囲との会話もどんどんかみ合わなくなっていくでしょう。  その結果、「最近のことはよくわからない」「理解できないから関わらない」という姿勢になり、気づかぬうちに社会からも取り残されて、孤独感を募らせることにもなりかねません。  だからこそ、自分の頭で考えることを決して放棄してはいけません。「思考実験」などという言葉を聞くと、難しいことを考えなきゃいけないように感じるかもしれませんが、テーマはなんだっていいんですよ。  どんな小さなことでも、くだらないと思えることでも、とにかく考え続ける、というのが大事なのです。 〈文/池田清彦〉
1947年、東京都生まれ。生物学者。東京教育大学理学部生物学科卒、東京都立大学大学院理学研究科博士課程生物学専攻単位取得満期退学、理学博士。山梨大学教育人間科学部教授、早稲田大学国際教養学部教授を経て、現在、早稲田大学名誉教授、山梨大学名誉教授。高尾599ミュージアムの名誉館長。生物学分野のほか、科学哲学、環境問題、生き方論など、幅広い分野に関する著書がある。 フジテレビ系『ホンマでっか!?TV』などテレビ、新聞、雑誌などでも活躍中。著書に『騙されない老後』『平等バカ』『専門家の大罪』『驚きの「リアル進化論」』『老いと死の流儀』(すべて扶桑社新書)、『SDGsの大嘘』『バカの災厄』(ともに宝島社新書)、『病院に行かない生き方』(PHP新書)、『年寄りは本気だ:はみ出し日本論』(共著、新潮選書)など多数。また、『まぐまぐ』でメルマガ『池田清彦のやせ我慢日記』を月2回、第2・第4金曜日に配信中。
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老いと死の流儀 老いと死の流儀

「老い」と「死」の正体を
生物学的、社会的観点から解き明かす!

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