「水55円、おにぎり98円」年商54億円、令和の虎1位の社長が仕掛ける“嫌味”から生まれたコンビニ革命
◆年商54億円でもユニクロと靴下しか買わない
水野:井口社長といえば、YouTubeの人気投資番組『令和の虎』での活躍も有名です。先日行われた視聴者による人気投票では、林尚弘社長や桑田龍征社長といった個性的なメンバーを抑えて、見事1位に輝きました。
井口:ありがとうございます。少し恥ずかしいですが、嬉しいですね。
水野:ご自身では、なぜそこまで支持されたと分析していますか?
井口:うーん、たぶん僕が圧倒的に“庶民”だからじゃないですかね。他の虎の皆さんは、やっぱり華やかじゃないですか。ハイブランドの服を着て、高級車に乗って。でも僕は、そういうのにまったく興味がないんです。
水野:年商54億円企業のトップですが、本当に興味がない?
井口:まったくないですね。昨年、自分のために買ったものといえば、Tシャツと靴下だけです。
ブランド物がわからないから、妻も「何を買ってきても値段がバレなくていい」と喜んでいますよ(笑)。腕時計も、生まれてから一度も買ったことがありません。
あと、僕はテレビドラマも生まれてから一度も見たことがないんです。興味のないことには時間を使いたくない。その代わり、朝は5時に起きて犬の散歩をして、仕事のことを考えている。そういう生活です。
水野:徹底していますね……。視聴者の方からは「庶民に寄り添ってくれる社長」というコメントも多いそうですが、TikTokでも「コンビニのおじさん」としてバズっているとか。
井口:そうなんです。街を歩いていても「令和の虎の人だ」と言われるより、「コンビニの人ですよね?」と声をかけられるほうが圧倒的に多い。渋谷駅まで歩くと3人くらいには声をかけられます。
最初は『令和の虎』に出るつもりなんてまったくなかったんですよ。岩井良明主宰(故人)に乗せられて、断れない状況で「出ます」と言わされてしまったのがきっかけで(笑)。
水野:それでも出演を続けているのは、何か目的があるのですか?
井口:故郷である長野県木曽町のためです。僕の地元は今、限界集落に近い状態なんです。僕らが高校生の頃は学校も3つあったのに、今は統廃合されてしまった。昨年の出生数はたった35人くらいです。
このままでは、自分の生まれ育った場所が消滅してしまう。この危機感は強烈です。木曽町の現状を知ってもらい、人を呼び込むためには、僕自身が有名になって発信力をつけるしかない。そう腹を括って、虎の席に座っています。
◆異色のキャリアと“負けない”経営論
水野:井口社長の経歴は非常にユニークです。大学卒業後にゼネコンの熊谷組に入社し、その後、横浜市役所の職員になられています。起業家としては「堅すぎる」ルートにも見えますが。
井口:いえ、これはすべて「独立するための最短ルート」として計算していたことです。
実家が事業をやっていたので、僕は小さい頃から「サラリーマンになる」という選択肢が頭になかった。いつか絶対に独立するつもりで、そのために何が必要かを逆算していました。
水野:具体的にはどういう計算だったのでしょうか?
井口:まず、独立して会社を大きくするには、大きな組織の作り方を知る必要があります。だから最初に大手ゼネコンに入りました。
次に、建築関係の仕事で独立するためには、法律や許認可の仕組みを裏側から知っておく必要がある。だから市役所に入ったんです。
ただ、市役所は予想以上に居心地が良すぎました(笑)。本当は2年で辞める計画だったのが、6年もいてしまった。周りの同期は今でも全員残っていますよ。公務員は本当に辞めないですから。
水野:そこから独立されて、設計事務所、美容室、保育園、障がい者施設と、脈絡がないように見えるほど多角的に事業を展開されています。これにも狙いがあるのですか?
井口:もちろんです。これも市役所時代、暇な時間にずっと考えていたことなんですが(笑)、「景気の波」に左右されない会社を作りたかったんです。
最初に美容室を始めたのは、設計事務所のキャッシュフローを補うためでした。設計の仕事は案件単価が高いけれど、入金までのサイトが長い。その間の「日銭」を稼ぐために、現金商売である美容室が必要だったんです。
当時はまだ電話予約が当たり前の時代でしたが、「ネットで予約できるようにしたら流行るはずだ」と考えてシステムを導入しました。たぶん日本で一番早かったんじゃないかな。それが2004年か2005年頃です。
水野:先見の明がすごいですね。
井口:事業のポートフォリオも、「不景気に強いビジネス」と「好景気で伸びるビジネス」の両極端を持つようにしています。
保育園や障がい者グループホームのような福祉事業は、景気が悪くても需要がなくならない公共的なビジネスです。一方で、設計事務所や美容室のようなサービス業は、景気が良ければ大きく伸びる。
この両輪を持っているから、どんな経済状況になっても会社が傾くことがない。僕の経営は「勝つこと」よりも「負けないこと」を最優先に設計されているんです。
水野:今や従業員数もグループ全体で1000人規模とお聞きしました。マネジメントはどうされているんですか?
井口:基本的に任せています。子会社の社長たちには、PL(損益計算書)とBS(貸借対照表)の見方だけ叩き込んで、あとは「失敗してもいいから若いうちにやってみろ」と。
毎月の会議で数字はチェックしますが、口出しはその程度です。致命傷にならない範囲で早めに失敗させて、学ばせる。僕が現場に行くと、どうしても口を出したくなっちゃうんで、行かないようにしています(笑)。
1973年生まれ。作家、出版プロデューサー、経営コンサルタント、富裕層専門コンサルタント。ベンチャー起業家、経営コンサルタントとして数多くのベンチャー企業経営に関わりながら、世界中の成功本やビジネス書を読破。近年は富裕層の思考法やライフスタイル、成功法則を広めるべく執筆活動をしている。現在は自ら立ち上げた出版社2社や文化人タレントプロダクション、飲食業のオーナー業の傍ら、執筆やコンサルティング、出版プロデュース業を営んでいる。国内外問わず富裕層の実態に詳しく、富裕層を相手に単にビジネスにとどまらない、個人の真に豊かな人生をみすえたコンサルティング・プロデュースには定評がある。
著書はシリーズ10万部突破のベストセラーとなった『成功本50冊「勝ち抜け」案内』(光文社)など27冊、累計40万部を突破。最新刊に『成功する人は、なぜリッツ・カールトンで打ち合わせするのか?~あなたを超一流にする40の絶対ルール~』(サンライズパブリッシング)がある。
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