更新日:2026年01月03日 18:08
仕事

30代からのキャリア戦略。「多様性」という言葉が氾濫する現代で、本当に自分らしい働き方とは何か?

残業禁止、副業推奨…それは本当に「多様な働き方」なのか?

多様性のイメージ 働き方改革の本来の目的は、個々の事情に応じて、多様な働き方を選択できる社会の実現である。  その理念は間違っていないと思うけれど、近年推し進められているのは、長時間労動の是正や残業時間の削減といったものがほとんどのようだ。また、お得意の罰則規定まで設けられ、コンプライアンス至上主義の弊害も生まれている。  例えば、決まった時間になると会社を追い出されてしまうから家に仕事を持ち帰るとか、残業ができないから期日に間に合わなくなり、その責任を管理職が負わされる、といったことだ。  これは「個々の事情に応じた働き方」などでは決してなく、「コンプライアンス至上主義によって強いられた働き方」でしかないだろう。  残業できないせいで収入が減って困っているという人も多く、それを解決するためなのか、副業を許可する会社も増えているようだが、残業してもいいから一つの会社だけで稼ぎたいという人だっているだろう。  結局ここでも、決められた枠の中での多様性にしか意識が向いていないのだ。

長時間労働は悪か? 同調圧力からの脱却と自己責任の重要性

残業する男性の後ろ姿 長時間労働に問題がないとは言わないが、本当の問題は長時間労働それ自体ではなく、みんながそうしなくてはならないという同調圧力のほうにある。  定時で仕事を終わりたいのにみんなが残業しているから自分も残業しなくてはいけないとか、休みたいのに誰も言いだせないといった状況に陥ることはあってはならないと思うけれど、特に研究開発職の人などには、時には寝食を忘れて研究に没頭したいという人だっているに違いない。  それを認めないのは「働き方改革」という仮面を被った新たな画一化になりかねず、自由な働き方の侵害にもつながりかねない。  働きすぎを防いで社員の健康を守るのが会社の義務だという声もあり、だから健康診断なども強制的に受けさせられたりするのだろうけど、働き方の自由が保障され、意に反した過酷な労働を課されたりはしないという前提のもとであれば、本人の健康なんて基本的には自己管理・自己責任で充分ではないかと私は思う。

「ホワハラ」の出現 多様な働き方の落とし穴と新たな同調圧力

 最近会社がホワイトすぎて物足りないと言いだす若者も増えているらしく、そういうのを「ホワハラ」というらしいが、それこそが、働き方に関する姿勢や考え方が多様であることの表れだろう。  残業などせずにさっさと家に帰れることが心地いいという人のほうが多いのは確かなのかもしれないが、そのマジョリティが正義になれば、人より余計に働きたいという人は白い目で見られることになる。  昔はさっさと帰る人のほうが白い目で見られていたわけだから、単にそれを反転しただけの話であって、多様な働き方を選択できる社会の実現などではない。 〈TEXT/池田清彦〉
1947年、東京都生まれ。生物学者。東京教育大学理学部生物学科卒、東京都立大学大学院理学研究科博士課程生物学専攻単位取得満期退学、理学博士。山梨大学教育人間科学部教授、早稲田大学国際教養学部教授を経て、現在、早稲田大学名誉教授、山梨大学名誉教授。高尾599ミュージアムの名誉館長。生物学分野のほか、科学哲学、環境問題、生き方論など、幅広い分野に関する著書がある。 フジテレビ系『ホンマでっか!?TV』などテレビ、新聞、雑誌などでも活躍中。著書に『騙されない老後』『平等バカ』『専門家の大罪』『驚きの「リアル進化論」』『老いと死の流儀』(すべて扶桑社新書)、『SDGsの大嘘』『バカの災厄』(ともに宝島社新書)、『病院に行かない生き方』(PHP新書)、『年寄りは本気だ:はみ出し日本論』(共著、新潮選書)など多数。また、『まぐまぐ』でメルマガ『池田清彦のやせ我慢日記』を月2回、第2・第4金曜日に配信中。
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多様性バカ 多様性バカ

一番重要なのは、自分の頭の中の多様性