アボカド高騰の陰に、知られざる“血と暴力”が存在していた…農家を脅かすメキシコ「カルテル」の恐怖支配
アボガド価格に含まれる、「カルテル」へのみかじめ料
このアボカドをメキシコの犯罪組織が見逃すはずはなかった。メキシコには「カルテル」と呼ばれる大小多数の犯罪組織が各地に存在する。誘拐や婦女暴行でアボカド農家を脅し、みかじめ料を吸い上げる。逆らった農民とその家族は殺害され、見せしめとしてさらされる。「カルテル」は力を誇示して農民らの暮らしを恐怖で支配するようになった。現在のアボカドの価格には、「カルテル」に払われたみかじめ料が経費として上乗せされているという訳だ。
地元ジャーナリストの分析では「カルテル」の構成員は約17万5000人。メキシコでは国内5番目の「雇用主」だという。ここまでの勢力となると、取り締まるはずの警察や軍には期待できない。汚職が蔓延し、情報は「カルテル」に筒抜けだからだ。「カルテル」と裏でつながる政治家もいるとされ、メキシコ社会から「カルテル」を締め出すことはできない。
アボカド農家の中には、武器を手に立ち上がる人々もいるが、とても対抗できるものではない。「カルテル」はこうした自警団にも入り込んで農民を懐柔する。自警団が新しい「カルテル」になってしまうことさえある。
「カルテル」の脅しに耐えきれず、恵まれたアボカド農園の経営をあきらめ難民としてアメリカに向かった人もいた。アボカド栽培が盛んなミチョアカン州でアボカド農園を営んでいたという男性は家族と従業員を守るために、1カ月2500ドル(約39万円)のみかじめ料を「カルテル」に払っていた。前年に弟が誘拐され、身代金を払ったものの、弟が戻ることはなかった。絶望の末に農地を捨てた。
健康果実の裏で続く暴力と沈黙
ニューヨークを拠点に活動するフリージャーナリスト。業界紙、地方紙、全国紙、テレビ、雑誌を渡り歩いたたたき上げ。専門は経済だが、事件・事故、政治、行政、スポーツ、文化芸能など守備範囲は幅広い。
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