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「どんどん気分が悪くなってきて…」新幹線で男性を襲った悲劇。隣に座った男性の“耐え難い特徴”とは

視覚から嗅覚へ、逃げ場のない状況

 決定的だったのは、その数分後でした。 「匂いです」  最初は微かだったものの、次第にチーズが腐ったような匂いと、ドブを思わせる湿った臭気が混じり合い、確実に周囲に広がっていったそうです。 「マスクをしていても分かるレベルでした」  視覚的な違和感だけであれば、まだ耐えられたかもしれません。しかし嗅覚への刺激には逃げ場がありません。 「呼吸するたびに来るんですよ。次第に気分が悪くなり、頭もぼんやりしてきました」  それでも彼は、しばらく席を立たずに耐えていたそうです。理由は単純でした。富士山を見るためにせっかく予約したからです。  すでに富士山は遠ざかっていましたが、品川駅で購入した幕の内弁当もあります。 「ここで移動したら、全部無駄になる気がして」  しかし限界は突然訪れました。宮内さんは静かに荷物をまとめ、何も言わず席を立ちました。向かった先は自由席です。幸いにも空席はあったとのことでした。 「指定席、あきらめました」  その言葉は淡々としていましたが、そこには確かな悔しさがにじんでいました。結局、幕の内弁当の袋を開けることはなかったそうです。

一寸先は闇を学んだ今回の旅路

 自由席に座り直した後もしばらくは、食欲が戻らなかったといいます。 「楽しいはずの移動時間が、完全に別物になりました」  それでも、宮内さんは強い怒りを感じていたわけではありませんでした。 「誰が悪い、という話でもないですからね」  そう前置きしたうえで、彼はぽつりとこう漏らしました。 「こんなハズレもあるんですね」 うなだれる男性 指定席を予約すれば安心、というこれまでの常識が崩れた瞬間だったのかもしれません。新幹線は定刻どおりに走り、宮内さんは予定どおり関西に到着しました。その後のUSJでのデートも、無事に楽しめたそうです。  ただ、取材の終盤、彼は少し考え込むような表情を見せてから、こう語りました。 「次も窓側は取ると思います。でも……」  その続きを、彼は口にしませんでした。富士山の景色と、あの強烈な体験。その両方が、次の旅にも同時についてくる可能性を、彼自身が一番理解しているように見えました。 <TEXT/八木正規>
愛犬と暮らすアラサー派遣社員兼業ライターです。趣味は絵を描くことと、愛犬と行く温泉旅行。将来の夢はペットホテル経営
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