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高3で、突然「あいうえお」が発声できなくなった…「喉に金属を埋める手術」を受けた34歳女性が“救い”を見つけるまで

手術と注射を繰り返しながら前を向く日々

――発声障害にもいろいろな種類がありますが、田原さんの症状はどのようなものでしょうか。 田原舞:私の場合、痙攣性発声障害といって、声が震えたり詰まったりして出にくくなるんです。イメージとしては、電波の悪い電話のようにブツブツ途切れる感じです。私は、特に「あいうえお」の母音が言いづらくて、「ありがとうございます」と言っているのに「りがとうございます」と聞こえてしまったり、「あ、り、が、と……」という細切れの発声になってしまったりするんです。接客業のアルバイトをしているときも、お客様から「なに言ってるかわらかねぇよ」と吐き捨てられたり、声がカサカサになっているので「風邪? うつさないでね」と言われることもありました。 ――治療法はあるのでしょうか。 田原舞:22歳のときに、喉に金属を埋め込んで声帯を広げる手術を行いました。事前の説明でもありましたが、これは完治するものではなくて、だいたい発症前の5〜7割くらいのコンディションに戻るようなものです。実際、私自身もそう感じています。また現在は、ボトックス注射を3ヶ月に1回程度の頻度で打っています。この注射はありがたいことに保険適用になりましたが、それでもなお1万6000円程度するもので、出費としては小さくない金額です。

「死にたい」と泣いた絶望の淵で夫が支えに

――ご病気になられて、世界がどのように変わりましたか。 田原舞:相手の方にそうした意図はなくても、「え?」と聞き返されることで、とても自信を削がれてしまう場合があります。あるいは、「もっとこんなことを伝えたい」と頭に描いたものがあったとしても、苦手な発音があるとそれを回避してしまったり、言葉が詰まることを恐れて短く浅いコメントで済ませてしまうこともあって、とても悔しい思いをしています。  本当に子どもには申し訳ないと思いつつも、コミュニケーションを避けがちだった私は、なるべく人気のない公園に連れて行ったり、幼稚園のイベントも最低限の参加にしたり……という具合でした。急に世界が狭まったことは私自身もつらく、「死にたい」と泣く日も多かったです。 ――死に直結する病気でないだけに、かえって「死にたい」が理解されないこともありますよね。 田原舞:本当にそうだと思います。世の中にはもっと重篤な病気の人がたくさんいることも承知していますし、何より閉鎖的になっていく自分の振る舞いこそが嫌になったりもするんです。そんななか、夫は当時発声障害を専門に診てくれる遠方の病院にも送り出してくれたり、泣いている私の話を聴いてくれるなど、いろいろと支えてくれました。理解してくれる人にも恵まれ、また自身の「好き」をブランド化できたことで、人生が好転したと思います。
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誰かの人生に彩りを添えていきたい
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ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki
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