ゴキブリ駆除に使命感を持つ64歳男性。「人が嫌がる仕事に商機がある」元エリートの逆転戦略
より「人が嫌がる仕事」を考えて、ゴキブリに辿り着いた
ーーそこからどうやって「ゴキブリ駆除」にたどりついたのでしょう?
大野:自分で事業を興す場合、会社の看板はありません。簡単には成功しないからこそ、まず「人が嫌がる仕事」を選ぼうと考えました。
下準備のためビジネス書を読み漁っていたとき、とあるビジネス書を読みました。それまでゴキブリ駆除は消毒液を使って行うものだと思っていましたが、本の中には「クリーム状の薬剤を隙間につける」やり方があると記載されていました。それで、「これで行けるのでは」と思ったんです。ビルのロビーやカウンターに飾る造花のレンタルも候補にありましたが、人が嫌がるのはゴキブリ駆除の方です。敬遠されるからこそ競合もそれほど多くはありませんし、単価も高くなりますよね。
本の中に掲載されていた、薬剤を使ったゴキブリ駆除業を行う企業に話を聞きに行ったところ、部長が銀座のデパートの飲食フロアに連れて行ってくれました。飲食店の閉店後、3人ぐらいの店長が部長のところに来て、「ゴキブリが一匹もいなくなった」と感謝していたんです。「ゴキブリ駆除は人の役に立つ仕事なんだ」と感じ、「一生の仕事にする」と決意しました。
ーー元々ゴキブリは苦手だったそうですが、起業したあとに迷いはなかったのでしょうか?
大野:起業した当時は、一つひとつ冷蔵庫などを動かして死骸を見つけただけで「うわぁ」と驚いていました。起業して1 軒目、喫茶店で駆除したときは夜22時くらいから徹夜で8時間もかかりました。くたくたになって家に帰って、続けられるかな?と思っていました。
20軒目くらい、お好み焼き屋で作業したときは全然ゴキブリが止まらなくて、お客様に怒られました。使用していた薬物に耐性を持っていたゴキブリだったようでした。すごく不安でしたが、「ゴキブリ駆除は人に感謝される」というポジティブなマインドは忘れないように心がけていました。
ーーなぜ会社を拡大できたのでしょうか?
大野:ほとんどのゴキブリ駆除会社は、毎月1回、年に12回作業に入って、ゴキブリの少ない状態と増えていく状態を”W”のように繰り返します。年に12回の訪問だと1回の予算が少なく、1件あたり10〜15分しかかけられず、完全駆除が難しい状況にあります。
自分の会社で作業に入るのは、年に2回だけ。その分、1回あたりにお金と時間をかけて徹底的に駆除作業を行い、ゴキブリゼロの状態を続ける「L字型」を突き詰めました。
「2回で駆除できなければ追加料金はなしで作業に行く」「新規のご契約で1年以内に完全駆除できなければ全額返金する」という保証もつけました。作業者側からすれば、必死になって完全駆除しようとします。
実際に、’24年度は契約している1881店舗中1872店舗で、ゴキブリが1匹もいなくなる完全駆除を達成しました。残りの9店舗は、ゴキブリが発生する原因である壁を壊せないなどの理由でゼロにならなかったのですが、原因を追及する姿勢に満足していただいています。
ライター。商業施設を開発するデベロッパー2社での勤務を経て、フリーランスへ転向。得意領域は街やショッピングセンター。『東洋経済オンライン』などでも執筆中。
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