更新日:2026年07月13日 10:43
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「毎日パンを買いに来る」70代男性には“真の目的”が…女性店員に“あり得ない要求”をして警察に通報されるまで/最新アンケート調査でわかった、加害者に多い年齢層とその背景

花束持参で妻にまさかの告白

 ある日、レジの方が騒がしいことに気づいた伊藤さんは、パン作りの手を休めて様子を見に行ったそうです。
迷惑客

※画像は生成AIによるイメージです

「レジには、いつものダンディな男性がいて、妻と何やらもめている様子でした。近づくと、その男性は妻に花束を手渡していました。妻は丁寧に受け取れない旨を伝えていたようですが、なかなか諦めようとしませんでした。  レジに並ぶ他のお客様も心配そうに見守る中、私が割って入り『申し訳ありませんが、受け取れませんので、お帰りください』と伝えたところ、急に激怒したのです」  一瞬にして店内は修羅場と化しました。伊藤さんは、なんとか高齢者をなだめようと必死に声をかけ続けましたが、収まる気配は全くありません。

キレまくる老人に身の危険を感じ110番

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※画像は生成AIによるイメージです

「一体いくら使ったと思っているんだ!雨の日も風の日も、私は毎日通って大金を使っているんだぞ!私の気持ちを踏みにじるとは何事だ!」  男性はさらに声を荒げ、自分の杖を振り回し始めました。周囲のパンを次々と床に落とし、大声で叫び続けていました。 「他のお客様にもご迷惑をおかけしていたし、このままではお店が潰れてしまうと思い、110番しました。すぐに警察官が駆けつけ、その男性は連行されましたが、パトカーに乗るまで大声でわめいていました」
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※画像は生成AIによるイメージです

 後日、警察から連絡を受けた伊藤さんによると、その男性は奥様に一目惚れし、日々その思いが強くなり、少しでも振り向いてもらおうと毎日パンを購入していたとのことです。 「私も、自分の対応が良くなかったと反省していますが、改めて高齢者との接し方には慎重になるべきだと学びました」 <TEXT/八木正規> *  *  *

■“怒れる常連”の正体は、じつはストーカーだった

 伊藤さんの話でいちばん驚かされるのは、あの怒声の正体が「一目惚れした奥さんに振り向いてほしかった」という、切ないほど個人的な感情だったことです。カスハラのように見えて、その根っこはストーカー的な執着だった――この二つは、じつは地続きなのかもしれません。  警察庁の統計によれば、令和6年に警察が受理したストーカー事案の相談は約1万9,000件。加害者を年齢別に見ると、60歳代が1,360人、70歳以上も1,028人と、シニア層だけで年間2,000人を超えます(出典:警察庁「令和6年におけるストーカー事案等への対応状況について」)。“恋愛は若者のもの”というイメージとは裏腹に、シニア世代の想いがこじれてしまうケースは、決して珍しくないのが実情です。

■“シニアだから”じゃない、たぶん

 こう書くと「最近のシニアはマナーが悪い」という話に聞こえてしまいそうですが、そう単純でもなさそうです。冒頭で紹介したUAゼンセンの同じアンケート調査によれば、迷惑行為をしていた顧客の推定年齢は、50代以上が全体の約4分の3を占めます。ただ、日本社会そのものが高齢化しており、街を歩く人・買い物をする人の年齢層も年々上がっています。「シニアだからトラブルを起こしやすい」というより、「客の中に占めるシニアの割合が高いから、目立ってしまう」という側面は、無視できないのかもしれません。  それでも気になるのが、今回の男性が発した「一体いくら使ったと思っているんだ」という一言です。長く通ってきた自負、日々の生活で積み重ねた“店との関係”――本人にとっては、それが花束を渡す動機になるくらい大切なものだった。そこを店側が受け取らないと言った瞬間、拠り所を崩された感覚に襲われたのかもしれません。

■レジ越しの数分が“特別な時間”になるとき

 内閣府が令和6年に実施した「人々のつながりに関する基礎調査」(対象2万人)でも、日常的に孤独感を抱える人の割合は依然として少なくないという結果が出ています(出典:内閣府 孤独・孤立の実態把握に関する全国調査)。  家族との会話が減り、職場という居場所もなくなった人にとって、行きつけの店での「いつもありがとうございます」の一言は、想像以上に大きな意味を持つことがあります。パンを毎日買いに来ていた男性も、本当は家族の分ではなく、一人分でよかったのかもしれません。それでも通い続けたのは、そこにしか居場所がなかったからなのかもしれない――そんな見方もできそうです。  もちろん、それは花束を押し付けたり、杖を振り回したりしていい理由にはなりません。ただ、“変な客”という一言で片付けてしまうと、同じことは何度でも、あちこちのお店で起きてしまいそうです。

■通報は「大げさ」ではない、それでも

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※画像は生成AIによるイメージです

 商品を床に落とし、大声で叫ぶ行為はすでに他のお客への迷惑行為で、伊藤さんの110番は正しい判断でした。従業員と他のお客の安全を守るために、身の危険を感じたら迷わず警察を呼ぶ――これは動かせない原則です。  そのうえで、店員側に“やわらかく突き放す”言葉の引き出しが少しあると、事態が大ごとになる前にほぐせる場面もあるのかもしれません。「お気持ちだけ、ありがたく」――受け取らない意思を伝えつつ、相手の存在そのものは否定しない。難しい線引きですが、シニア層の来店が増え続けるこれからの接客業では、こうしたやりとりの技術が、防犯ブザーと同じくらい大切になっていくのかもしれません。  誰かの“居場所”になれる店でありながら、従業員も守られる場所であること――。その両立を目指す試行錯誤は、たぶん、これからの時代ずっと続いていくのだろうと思います。 <再構成/日刊SPA!編集部>
愛犬と暮らすアラサー派遣社員兼業ライターです。趣味は絵を描くことと、愛犬と行く温泉旅行。将来の夢はペットホテル経営
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