「私は嘘つきじゃなかった」救いになった一言
――すごく複雑ですね。実際に会うと生物学的性は女性、心の性は男性、社会的性は女性であることは理解できます。社会的性は自分の中での女性としての振る舞いですか? それとも他者に女性として見られるための振る舞いですか?
雄乃:女性として見られたいというよりは、人間として美しくありたいので、自分の中で女性としてのルッキズムを加速させているんです。それと、男性ホルモンを投与すると肌が荒れるので、耐えられなくなったんです。だから、私は女性に近づいた方が美しくあれるので、女性装をすることに抵抗はないんです。でも、冠婚葬祭の正装時は、男性スーツを着ていきます。私の正装は男性装なんです。自分が正装と思ったものを着ているだけという理由です。
――私たちが常識にとらわれているだけで、自分が正装だと思ったから着るという単純な理由ですよね。そうやって看護大学での学びや知識を得たことで、地獄から解放されたと。
雄乃:はい。知識を得たことで「自分は嘘つきじゃなかったんだ」と思えて、ようやくこの地獄から少し解放されました。でも、お世話になった当事者の方が「トランスジェンダーは進むも地獄、留まるも地獄という言葉があるんだよ」とおっしゃっていて、本当にその通りだなと思いました。地獄そのものが消えるわけではないけれど、仕組みがわかったことで少し楽になれただけです。だからどんどん楽になろうと自分を受け入れ続けた結果、ある種、最強の「モンスター」が誕生したなと思っています(笑)。
――看護大学を卒業したあとはどうされたのですか?
雄乃:看護師になりました。新社会人の辛さは性別関係なくみんな同じですので、普通に必死に働いていましたね。
セクシー女優になった理由「純粋に性的な感情を100%ぶつけ合える」
――そこから、セクシー女優になろうと思ったきっかけは何だったのでしょうか?
雄乃:ずっと夜職に憧れていたことと、性への興味と関心が高かったことかな。母方の親がスナックのママをやっていたので夜職の家系でしたし、性への興味と関心が高いこともあり、風俗や性病クリニックで働いていたんです。その中で男優さんや女優さんを見ていて、セクシー業界の距離が自然と近くなっていったんです。人生の中で風俗、キャバクラと経験して、最後は成人向け作品の業界だなと思ったんです。
――なるほど。
雄乃:それに私は元々、人や性が好きなので、キャバクラのようにお客様が私に尽くしてくれる関係は、お互いにとってウィンウィンだと思っていたんです。でも、だんだんと「お客様は私自身を好きというより、お金をあまり使わずに性的なことをしたいだけなのかな」と感じるようになってしまったんですよ。そう考えるようになってからは、大好きだったはずの性的行為に対して心理的なハードルが高くなってしまい、一時期はプライベートで性的行為ができなくなってしまったんです。そんなときに出会ったのが、成人向け作品だったんです。成人向け作品の世界では、男女のドロドロした駆け引きではなく、メーカーさんや男優さん、事務所のみなさんと一緒に、一つの作品づくりとして純粋に性的な感情を100%ぶつけ合える。その環境が私にはすごく心地よくて、うれしかったんです。だから私にとって、愛情や情熱をぶつける場所が、セクシー女優だったという感覚ですね。
――一般社会とセクシー業界を比べて、トランスジェンダーに対する差別や違いなどは感じますか?
雄乃:元々、看護の世界という比較的フラットな環境で生きてきましたし、セクシー業界も偏見や差別の少ない世界ですよね。振り返ってみると、自分が生きやすく、ありのままでいられる環境を、本能的に選びながら生きてきたんだと思います。
――その境地に至った最大の要因は何ですか?
雄乃:あらゆる障壁を受け入れ続けたことです。受け入れることで楽になることもあるんです。
――受け入れることと妥協は違いますからね。そこには強い意志が感じられます。
雄乃:受け入れたら「モンスター」になりました(笑)。
支えてくれた人たちへの、涙の感謝
――かなり深い話が聞けましたが、現在、同じようにセクシャリティで悩んでいるトランスジェンダーの方へ、メッセージをいただけますか。
雄乃:「あなたは嘘つきじゃないから大丈夫だよ」と伝えたいです。私がこうして表に出て発信することで、若い世代の子たちが少しでも楽に生きられるように、世間の理解を広げていきたいです。だから、踏ん張って、少しだけ安心して過ごしてほしいなと思います。
なので、私はとりあえずSNSのフォロワー1万人を目指して頑張ります(笑)。
――素晴らしいメッセージです。
雄乃:それに、この問題はトランスジェンダーの子たちだけのものではなく、社会から「男性らしさ」「女性らしさ」を求められて苦しんでいるすべての人にとっても、生きやすさに繋がる話だと思うんです。みんなで考えていくことで、人々がもっと楽に生きていけるのではないかと思っています。
――ちょっと蛇足になりますが、テレビのバラエティ番組などに出演するトランスジェンダーやニューハーフの方が、いわゆる「いじられキャラ」や「自虐」として振る舞うことについてはどう思われますか?
雄乃:私自身も自虐をして生きてきた時期があるので、気持ちはすごくわかります。社会に受け入れてもらうために、先輩方が必死に努力して道を切り開いてくれたんだなと思っています。ただ、だからといって、それを見た一般社会で、トランスジェンダーの人たちが差別的な言葉でからかわれたり、いじめられたりすることは、私は絶対に許しません。「エンタメと一般社会は別物だ」ということをみんながしっかりと理解することや、身近にいる大好きな友達のことだと、もしもの想定をしてほしいです。それに当事者の人には、厳しいことを言いますが、勉強でも容姿でも何でもいいのでひとつ周りの人より努力して、受け入れてもらう体制を整えるのがいいかなって思います。残念ながら、私たちはひとりで生きているわけではなく、社会と共存しているので。
――最後に、これまで支えてくれた周囲の人や友人に向けてメッセージはありますか。
雄乃:自分の人生を振り返って、自分の性と生に正直なだけなんだと思います。この時代の日本に生まれたことは本当にラッキーでした。そして、これまでの人生でたくさん迷惑をかけてしまった周囲の人たちには「ごめんね」ということ、私を今日まで生かし、受け入れてくれて「本当にありがとう」という感謝の気持ちをこの場を借りて伝えたいです。あなたたちがいなかったら、私は絶対に生きていけなかったです。
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「男か女か」という単純な二択では語れない人生を歩み、自分自身を受け入れ続けた先で「私は私になった」と言い切る雄乃ゆめさん。その言葉には、長年の葛藤を乗り越え、自分らしく生きることを選び続けてきた強さがにじんでいた。
このインタビューが性別に限らず、「自分らしさ」や「生きづらさ」に悩む誰かにとって、少しでも心を軽くするきっかけになれば幸いだ。

雄乃ゆめ
X:
@onoyume_
<取材・文・撮影/神楽坂文人(X:
@kagurazakabunji)>
※性の在り方は多様です。
・性的指向:どのような性別の人に恋愛感情や性的な関心を抱くか
・性自認:自分自身の性別をどのように認識しているか
・身体的な性の特徴:身体的・生物学的な特徴による性
・性表現:服装、髪形、仕草、言葉遣いなどを通じた性の表し方
これらは必ずしも一致するとは限りません。
世界一セクシー女優を取材しているカメラマン、ライター、インタビュアー。元成人誌編集者のため、最後の砦として活躍中。年間イベント取材数300本超え! 年間インタビュー数200本超え! バイクで都内を駆け巡り1日で複数の仕事を受けている。X(旧Twitter):
@kagurazakabunji