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日本航空123便墜落事故から41年。「DNA鑑定が存在しない時代」、身元特定に貢献した法歯学者の“かつてない挑戦”

あまりに大きな犠牲が教えてくれたのは…

――事故から41年、日本の身元確認体制はどこまで整備されたとお考えですか。今後の課題は。 橋本:警察歯科医の制度が全国に整い、体制は大きく前進しました。DNA鑑定という強力な手段も加わりました。あの当時を思えば、隔世の感があります。 ただ、「DNAさえあれば何でもわかる」と結論付けるのには危うい印象を抱きます。DNA情報には名前がないんです。「あなたのDNAを知っていますか」と聞かれても、誰も答えられないでしょう。照合する資料がなければ、誰であるかまではたどり着けない。だからこそ、まず歯で身元を確認するべき。そのご遺体のDNAがわかれば、そこから手足の断片へとつなげていける。どちらが優れているという話ではなく、順番と組み合わせの問題なんです。 社会の変化も課題です。歯科に通わない人が増え、カルテが残っていない。未曾有の状態で大きな災害が起きたとき、何を手がかりにするのか。2026年秋の発足をめざす防災庁も、いまは南海トラフ地震や首都直下地震といった自然災害に視線が向いています。航空機事故のような人災まで含めて、身元確認や遺族対応をどう位置づけるのか。細部まで見据えた議論をしてほしいと願っています。 とはいえ、私は悲観していません。歯が身元確認の決め手になると誰も知らなかった時代から、いまは全国に警察歯科医がいて、鑑定の技術も格段に上がりました。かつては現地へ飛ぶしかなかったものが、いまは写真一枚を送れば、その日のうちに照合ができる。備えの形は、確実に前へ進んできたんです。 520人という、あまりに大きな犠牲が教えてくれたことを、次の災害で一人でも多くの方をご家族の元へお返しするために活かす。それが、あの現場に立った私たちの責任だと思っています。 <取材・文/菅原春二>
東京都出身。フリーライター。6歳の頃から名刺交換をする環境に育ち、人と対話を通して世界を知る喜びを学んだ。人の歩んできた人生を通して、その人を形づくる背景や思想を探ることをライフワークとしている。
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