更新日:2026年08月24日 17:47
ニュース

内部告発した人の悲惨な末路。仕事を干され勤務時間は「1日37分」、退職金9割返納…勇気ある通報者に下る“会社の報復”

官製談合を告発し、退職金9割返納命令

吉村氏

悲痛な思いを訴える、千代田区役所の元施設部長・吉村氏

「副区長から『区議に聞かれたら答えてやってくれ』と言われて、ピンときましたよ」  東京・千代田区役所の元施設部長・吉村以津己氏(64歳)は、こう振り返った。 ’24年、千代田区で官製談合事件が発覚。区立小学校・幼稚園の改築工事の一般競争入札で、入札情報を漏洩していたのだ。“自民区議のドン”嶋崎秀彦区議と吉村氏が官製談合防止法容疑で逮捕され、執行猶予付きの有罪判決が確定。山口正紀・副区長は供述調書で情報を漏らしたことを認めたが、時効が成立していた(肩書は当時)。 「もちろん、関わりたくなかった。でも、事務方トップでナンバー2の副区長に言われたら、なかなか拒めません。ノーと言ったら、人事でどんな冷遇を受けるかわからない。それに、私が拒んでも他の人がやらされる。言う通りにするしかなかった」  情報漏洩の指示は、’18年に入札を管理する部署の部長に吉村氏が着任して直後のこと。 「副区長は『これまでオレが契約課長に頼んでやってもらってた』とも言ってました。つまり、情報漏洩は以前から行われていた。副区長が指示していたということは、区ぐるみで不正に長らく関与してきたということです」  官製談合は、’17年から続いていたことが、捜査でわかっている。一方、吉村氏は’21年に役所を定年退職。区の外郭団体に再雇用されていた。 「墓まで持っていくのか。イヤだなって、ずっと思ってました。でも、区ぐるみだけに不正は続いていく。断ち切るには、告発するしかない。匿名の告発でしたが、いずれ捕まることは覚悟の上でした」  実際、吉村氏は逮捕される。有罪判決を受け、仕事と年700万円ほどの収入を失った。そして、昨年6月、千代田区役所から思わぬ通知が届く。退職金約3034万円の「9割」の返納命令だった。 「『驚きました。報復は予想していたけど、ここまでやるとは……。有罪判決を受けた私にペナルティを科すのは、理解できる。でも、『9割』の根拠がメチャクチャ。役所は『公益通報者保護法で守られる退職から1年以内を過ぎて、私は退職の1年半後に通報したから情状酌量の余地はない』と言う。でも、不正に関与した私の後任は、たった3か月の停職。あまりにバランスを欠いている」 退職手当返納命令書
退職手当返納命令書

退職手当返納命令書。その内容は、すでに支払われた退職金の9割を返納しろというものだった

 千代田区は事件後の調査結果を退職金返納の根拠としているが、実施したのは第三者機関ではなく、区が依頼した弁護士だ。副区長の情報漏洩の指示についても、裁判所が認定しているにもかかわらず、「関与はなかった」と結論づけた。つまり、区は不祥事の検証と再発防止に胸を張るが、吉村氏個人の不祥事として幕引きを図ったのだ。 「告発しなければ、不正は今も続いていた。私が受けたような報復がまかり通れば、今後、全国の自治体から不正を告発する職員はいなくなる」  千代田区役所に退職金返納の根拠を問うと、処分理由を述べた区のHPのコピペが回答として戻ってきた。吉村氏は、処分取り消しを求めて審査請求中だ。 <取材・文・撮影/齊藤武宏、取材/山本和幸>
1
2
SPA!編集部が「人生後半を賢く楽しく生きる」をテーマに厳選した記事をメルマガ会員限定で毎週金曜日にメールでお届けします。仕事・お金・性・人間関係…人生を豊かにする秘訣が見つかります。無料・10秒で完了です。
無料でメルマガ登録する⇒⇒
※登録後、メール認証が必要です。受信した認証メールをクリックして、登録を完了させてください。
※認証メールが届かない場合、迷惑メールに入っているか、メールアドレスが間違っている可能性があります。再度ご登録ください。