ラスベガスのギャンブル産業のマーケティング手法を実践
橘:風俗の仕事を「男の欲望の収益化」という視点から、るるたんさんは徹底してビジネスとして分析していることに驚きました。逆にいえば、「自分のエロス資本の最大化」ということになりますよね。
るるたん:そうかもしれません。大前提として、風俗で稼ぐには寿命があると私は思っていて。年を取れば稼ぎづらくなるし、それにお店に100人のお客様がいたら、その100人が一周して誰にも刺さらなかったら終わりで、そうなったら店を替えるしかないという世界です。その状況を回避するために考えたのが、お客様に消費していただくスピードを遅くすることと、自分の年齢以上の付加価値をつけることでした。その一環として店舗外からもお客様を引っ張ってこようと考え、SNSを始めたんです。
橘:最初からかなりマーケティング的な発想ですね。
るるたん:お客様に1回で大きなお金を使わせるより、長く来てもらうことを大事にしたんです。るるたんという存在がハマるお客様は、人数に限りがあります。その人たちに、まず知ってもらう。その認知してもらう作業がSNSで、ひとつのコップにお客様を貯めていくイメージです。お客様は、いつまでも続くわけじゃない。だから、ひとつしかないコップからどんどん使っちゃうと、すぐに空っぽになって、るるたんの寿命も尽きる。でも、なるべく少ない人数をゆっくり回していれば、その寿命が伸びていきます。
橘:いまの話から連想したのは、ラスベガスのギャンブル産業です。カジノの目的は、じつは客に有り金すべてを使わせることではない。破産してしまえば、二度とカジノに来てもらえないわけですから。そこで今のギャンブル産業が取り組んでいるのは、「プレイヤーが一生のうち、自分たちのカジノでいくらお金を失うか」を予想し、その「予想最大価値」を最大化することです。40歳のサラリーマンに全財産の500万円を使わせるのではなく、1年間に50万円ずつ、40年かけて2000万円の利益を実現したほうがいい。だから最近のギャンブルマシンは、依存しすぎないように微妙に調整されている。いわばギャンブル版のSDGs(持続可能な開発目標)です。
るるたん:歌舞伎町でラスベガスの手法を取り入れていたんですね(笑)。でも、当時はマーケティングなんて全然意識していませんでした。

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橘:SNSは、Twitter(現X)から始めたんですか。
るるたん:はい。Xを始めたら、今まで店の中だけだった競争相手が、A店の○○ちゃん、B店の○○ちゃんと一気に増えた。そこで初めて「まだ上がいる」と視座が広がりました。そこから、どうしたらSNSでお客様を取れるか、数字を伸ばせるかということにハマっていきました。それでSNSで多くのお客様を集められるようになってからは、お店に対して「自分がやっていることはポータルサイトに広告を打つのと同じ役割なので、バック率を上げてもらえませんか」と交渉するなどして、少しずつ単価が上がっていきましたね。
橘:それまでは、SNSをやってなかったんですか。
るるたん:やっていませんでした。でも、今振り返ると、もともとSNSが好きではなかったから、仕事で成果を出せた気がします。SNSが好きな人は投稿するのが日常になっているので、公私の区別がつかずに余計なことまで言いがちですよね。私には「投稿すること自体が楽しい」という感覚がなかったので、無駄な発言をしなくて済みました。
橘:世代的には、小学生の頃からSNSをやっていてもおかしくないですよね。完全にビジネス目的だから、うまく使いこなせるようになったというのは面白いですね。
るるたん:でも、数字が伸びるとか、分析が当たるとか、そういうことはものすごく楽しいです。
橘:もともと、数字を伸ばすのが好きだったんですか。
るるたん:そうですね。通知表も嬉しかったし、模試のランキングも大好きでした。中高まではそういう明確な評価基準があったのですが、大学に入ると、評価基準が急に変わる。そこで見つけたのが、風俗で稼ぐお金だったんだと思います。お金は、頑張ったことに対する明確な評価になりますから。私は、お金をあまり使いません。1億円をあげると言われても、正直そんなに欲しくない。でも、1億円を稼ぐことはやってみたかった。その数字を達成すること自体に、興味があったんです。
橘:市場経済は、お金という数字によって明快にランキングしてくれますからね。それに加えてSNSは、評判というこれまで目に見えなかったものを、フォロワーや「いいね!」の数として可視化した。これはものすごいイノベーションだと思います。
るるたん:そうですね。それまで風俗店のサイトにある「写メ日記」で予約をとっていたのですが、「XのDMで予約を取るので通知をオンにしてね」と既存のお客様をXへ誘導しました。そうすると、私がただの自撮りを上げただけでも、みんな通知によって見に来て、「いいね」を押してくれる。その結果、投稿への反応、つまりエンゲージメント率が上がるんです。Xって、反応の高いアカウントを優遇するので、そこから、外の人にもどんどん広がっていき、フォロワーが1万人へと一気に増えていきました。
橘:そうしてTikTokやInstagramでもフォロワーを増やし、インフルエンサーになっていったわけですね。

るるたんが考える、写メ日記の1日の構成。顧客の気分から逆算してコンテンツを設計する(図版は「るるたん おさむの欲望のKPI」より)
橘玲
作家。1959年生まれ。早稲田大学卒業。編集者を経て、2002年に国際金融小説『マネーロンダリング』で作家デビュー。同年刊行の『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』がベストセラーとなり、以後、金融、投資、社会制度、人生設計などをテーマに幅広く執筆活動。近著に『
プアジャパン――インフレ世界を生き抜く資本戦略』。
るるたん
SNSの総フォロワー130万人(2026年8月時点)を数える人気インフルエンサー。19歳で新橋にて風俗デビュー。マーケティング思考を武器に絶大な集客力を誇り、デリス新宿では18か月連続ナンバーワンを達成。23歳で同人AVに転身し、トップの座に上り詰める。写真集の刊行、撮影会の主催、浅草ロック座では主演を務めるなど多方面で活躍している。共著に『
るるたん・おさむの欲望のKPI』(扶桑社新書)