更新日:2026年10月05日 18:00
仕事

舌打ち、溜め息、無視…全国の職場に蔓延する「不機嫌ハラスメント」の深刻な実態。仕事をしている人の約75%が「職場に“フキハラ”をする人がいる」

被害者は今も泣き寝入りを強いられている

 時にフキハラは重大な結果をもたらす。’18年、東京ガスから子会社に出向した24歳男性が上司からフキハラを受け、うつ病を発症して自殺している。その後、遺族が行政訴訟を起こし、今年4月、労災を認める画期的判決が出た。裏を返せば、フキハラ被害は救済されにくいのだ。  ’25年11月には、30代の栃木県自治体職員男性が、経験が長い女性部下による日常的なフキハラに遭い、2か月の休職に追い込まれ、慰謝料を求めた民事訴訟で和解を勝ち取っている。だが、原告男性は提訴前に弁護士に依頼したものの、「フキハラを明確な逆パワハラと認めてもらうのは難しい」と断られて納得がいかず、生成AIを駆使して本人訴訟に踏み切ったのだ。  労働案件を手がけることも多い弁護士の藤原規眞氏は、こう明かした。 「フキハラは、グレーゾーンハラスメントゆえに証拠を集めにくい。解決する見通しが立たず、お金にもならないので、弁護士は普通やりたがらないでしょうね。私が手がけた案件では、加害者に『これ以上続けるなら、法的措置をとる』と伝えたところ退職したので、問題は解決しました。でも、実際に裁判になったら困るなというのが、当時の偽らざる気持ちでした」  法整備は後手に回り、裁判に訴えても救済されることは難しい……。フキハラは日本中の職場で静かに増え続け、被害者は今も泣き寝入りを強いられている。 慶應義塾大学理工学部教授 満倉靖恵氏 工学博士。医学博士。医工連携研究の第一人者。『フキハラの正体』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など著書多数 神奈川県立保健福祉大学大学院教授 津野香奈美氏 職場のハラスメントや労働者のメンタルヘルスに精通し、政府委員を歴任。『「不機嫌な職場」を科学する』(SB新書)など著書多数 弁護士 藤原規眞氏 元衆院議員。氷河期世代で非正規雇用を転々とした経験から、国会議員、弁護士として労働環境の改善や格差是正に尽力する <取材/山本和幸、取材・文/齊藤武宏、写真/Adobe Stock>
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