雑学

タイのウドン地方にタイ人が経営するラーメン屋台があった!

 昨今、タイは空前の和食ブームが到来していて、ここ数年で便乗したタイ人たちが次々に「なんちゃって」な日本食(和食とは正直言えないレベル)を展開し始めている。

 この10年くらいで、砂糖入りやはちみつレモンの緑茶をコンビニなどに卸す「オイシ」というレストラングループや日本食レストランを全国展開する「フジレストラン」が牽引役となり、一般タイ人もかつてはセレブ層だけのものだった日本食を食べるようになったのだ。
 
 そんな中、タイの東北地方の奥地、ほとんどラオスの文化圏といってもいいような田舎町に、日本風屋台を引き、日本風ラーメンを売りにする店が登場したとの噂を耳にした。

 そこはウドンタニー県の中心地。ベトナム戦争時は、米軍が基地を置いていたので栄えていた町だが、現在では怪しげなバーが多少並ぶ程度の、タイではごくありふれた地方都市である。唯一ほかと違うのは白人、それも爺さんクラスが多いこと。どうも、ベトナム戦争のころに来ていたおじさんたちが定年退職後に青春の地に舞い戻ってきているようである。

 日本人はといえば、これがほとんど見かけない。タイには年間およそのべ100万人の日本人が訪れ、現在では華僑のようにどこにでも日本人はいるようになっている。それでもさすがにウドンタニー在住というのは恐らく多く見ても数名と言っていいレベルなのだ。

 なぜそんなところにラーメン屋があるのだろうか??

 さっそくウドンタニーを訪れてみると……。

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雰囲気な完全に日本。でも背景をよく見るとタイ語!

 あった! 確かに日本風のラーメン屋台だ!

 早速座ってみる。

 暖簾や提灯など雰囲気はまさに日本。コショウなども日本のものを置いていたりする。

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意外や意外、日本のラーメン店でアルバイトしただけあって、結構イケる!

 メニューは「しょうゆ」(59バーツ)、「とんこつ」(69バーツ)だけ。大体1バーツが現在2.5円くらいなので、59バーツは150円くらいだ。タイの麺類は屋台の丼で40バーツくらい。量は日本国内でのラーメンよりもやや少なく、タイ麺類よりも多い。グラムあたりで計算すれば決して高い料金設定ではない。

 味はというと、意外や意外、結構いける。日本のラーメンにしたらかなり薄味だが、バランスがいいので決して悪くない。具は共通でめんま、チャーシュー、ゆで卵、茹で野菜にネギ。チャーシューは甘くて、煮豚という風になっているのは残念だが。麺は太めで、タイ製の日本ラーメン用麺を使用している。すすったときにやや臭いが気になるが、この値段でこの味なら随分とがんばっているほうじゃないだろうか。

 タイには屋台が多いとはいえ、このように車を囲んで座らないので珍しいスタイルだ。日本人の記者には、この懐かしい雰囲気がなんとも心地いい……。

 店主の奥さんに話しかけると、名前は”ラーさん”だという。

――なんでこんな田舎町で日本のラーメンを?

「元々主人がウドンの人だからね。旦那の名前は”メン”よ」

っておいおい、夫婦揃うとラー&メンかよ……。店に合わせてニックネームをつけたのだろうか。聞いてみたがそこはお茶を濁された。

「私と主人は東京の新小岩に6年住んでいて、いろいろな店で働いた中でラーメン店での経験が一番タイで役に立つのではと思ったヨ。ウドンタニーで開店したのは昨年末。お陰様で開店から地元の人にも評判はよく、みんな、おいしいって言ってくれるヨ。お客さんは若い人が多いネ」

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手慣れた手つきのラーさん。日本語も上手だ

 ラーメンをすすりながら屋台に座っていると、高校生くらいの女のコたちがやってきて、ラーメンを食べながら日本語の勉強の仕方などをラーさんに訊ねている。そう、ラーさんは日本語が話せるのである。そのせいもあってか、時折訪れる日本人の評価も高いという。

 それにしても、なぜタイでは一般的な食堂スタイルでなくて、日本式の屋台だったんだろうか……。

「これはひとつの始まりヨ。ここからさらに大きくなっていくネ」
 
 ニタリと笑みを浮かべたラーさん。確かにほかの日本食に行くなら、タイでは珍しいスタイルもあってここにまた来たいと思う。ひょっとしたら、この人たち、大成功するんじゃないだろうか……。

●データ
場所 : タイ・ウドンタニー県駅前バザールエリアに並ぶ屋台群の一角
店名 : ナシ(まだつけていない)
時間 : 18:30~22:00もしくは23:00
休日 : 日曜日

<取材・文・撮影/高田胤臣>




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