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「公務員を増やして景気回復!」三橋貴明がズバリ解説!!

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頑張って働いてますよ、と

「日本は国内需要を供給能力が大きく上回ってしまった結果、デフレギャップが拡大しています。この長年のデフレは、『公務員が少なすぎる』ことに一因がある可能性があるのです」と衝撃の指摘をするのは、作家・三橋貴明氏だ。 ――公務員削減は疑うことのない正論だと思っていました。 三橋 実は、日本の公務員数はOECD諸国で比較すると最も少ないのですが、日本国内に『我が国の公務員は多すぎる! 数を減らすべきだ!』と真顔で言ってのける政治家が存在しています。日本の公務員数の対労働人口比は、OECD諸国の中でダントツに小さく、OECD平均と比較しても3分の1程度です。これのどこが『公務員が多すぎる!』のか私は不思議でなりません。現実には、日本の公務員数は国際的に見ると少なく、だからこそ日本は『経常収支黒字国』であり、デフレが続いている可能性が高いのです。 ――経常収支とデフレにも関係があるのですか? 三橋 ロシアを除くG8諸国、すなわち日米英独仏伊加の7か国を見ると、公務員数が対労働人口比で少ない国はドイツと日本です。逆に、多い国がアメリカ、イギリス、フランス、イタリア、カナダになります。驚くべきことに、公務員が少ない2か国は、ともに経常収支が巨額黒字で、公務員が多い5か国は、すべて経常収支が赤字になります。経常収支とは、貿易収支、サービス収支、所得収支、さらに経常移転収支の合計です。特に、初めの三つ(貿易収支、サービス収支、所得収支)は、その国の生産力と密接に関わりを持っていて、その国の製造やサービスの供給能力が高いと、はじめて『輸出』が可能になります。自国の供給能力では国内需要さえ満たせない状況で、輸出をするような国はあまり存在しません。また、所得収支の多くは過去の経常収支黒字により生まれた『対外投資』からの収益(配当金など)になります。いずれにしても、その国の製品やサービスの供給能力が十分で、国内どころか海外にまで投資をし、国家全体としての供給能力拡大に努力しない国は、経常収支が黒字化することありません。同時に、国民経済において『官』の力が強い国は、国内の供給能力や生産性の向上が起きにくい。別に公務員の悪口を言いたいわけではありませんが、国営企業などの『官業』では、経営者や従業員に、生産性を高めようというインセンティブが発生しにくいのです。公務員が極端に少ない日本は、その分だけ『民』の力が強いということになります。結果、1980年代から延々と経常収支の黒字を積み重ね、現時点においても対外純資産世界一、すなわち世界最大の金持ち国家になったのです。 ――日本は「民」の力が強く、「官」が弱いわけですね。 三橋 例えば失業者を公務員として雇用しましょう。すると、GDP上の『政府最終消費支出』が直接的に増えます。公務員になった元失業者は、受け取った給与の多くを消費に回すはずです。すなわち、公務員を増やすことこそが、最も手早くデフレギャップを埋める手段なのです。デフレ脱却に向けた対策の一つとして、現在の日本は公務員の増加を検討していい時期だと思います。公務員の増加とは、需要拡大策の一つで、深刻な需要不足でデフレに悩んでいる以上、公務員増加を検討しないほうがむしろおかしい。この種の政策を考える際に、『働きもしない公務員を増やすのか!』と、子供っぽい感情論で反対するのはお粗末です。何しろ、失業者を放っておくと、いずれにしても生活保護を支給する必要があります。同じ支出をするのであれば、失業者を公務員として雇用し、震災復興なり公サービスの供給なりに充てたほうがいい。そのほうが、失業者本人のためにもなるはずです。日本に蔓延している『公務員は多すぎる』論には、そもそも数値的根拠がまったくありません。経常収支の黒字が続き、デフレギャップが埋まらない以上、日本の公務員はむしろ少なすぎる。数値データという現実を無視し、『公務員を減らします!』と政治家が叫ぶのは、虚偽と欺瞞にまみれたポピュリズムでしかありません」 ――「公務員の人件費を下げるべし」という主張に対してはどう考えますか? 三橋 日本は公務員数のみならず、公務員給与の対GDP比率も世界で最低水準です。2007年の主なOECD加盟国の公務員人件費の対GDP比率を見ると、日本が6.9%、アメリカが9.9%、イギリスが10.9%、フランスが12.8%、フィンランドが13%、スウェーデンが15.1%、そしてデンマークが16.9%となっている。北欧諸国は『政府がたくさん税を徴収し、たくさんサービスを供給する』という国家モデルですから、日本と比べても意味がないでしょう。とはいえ、北欧諸国以外の米英仏3か国と比較してさえ、日本の公務員人件費の対GDP比率は小さいのです。昨今の公務員叩きは魔女狩りの色が濃く、極めて不健全だと思います。公務員を『悪者』に仕立て上げ、それを叩くことで自らの権力を高めようという政治的意図が見え隠れします。この種の魔女狩りを得意としたのは、スターリンや毛沢東などの共産独裁国のリーダーたちであったことを知っておきましょう。 三橋貴明氏の新刊『経済と国家がわかる 国民の教養』(9月2日発売)には、これらの目からウロコの事実が30も収められている。三橋氏は「30の教養が日本を変えると信じています」と言う。『日本は財政破綻する』『少子高齢化でデフレになる』『日本の道路はもう十分』『年金制度は崩壊する』など、あなたが信じ込んでしまっている情報は本当に正しいのか? 「常識を疑うと新しい教養が身に付きますよ」という氏の言葉は刮目に値するだろう。 文/犬飼孝司(本誌) 写真/casek from flickr
経済と国家がわかる 国民の教養

9月2日発売。「常識を疑わないバカが日本を壊す。」

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