雑学

関西で大人気「ポールウインナー」の謎

関西では、大半の家庭に常備されている「ポールウインナー」。手羽唐や柚子胡椒など、地方のウマいものがどんどん全国区になっているのに、ポールウインナーだけが“永遠のマイナー”なのはなぜ? その謎に迫った。



 事の発端は、飲み屋での会話であった。「子どもの頃よく食べてたポールウインナーってあるじゃん。あれウマいよね」「なにそれ?」「え? あの、オレンジ色のセロハンに入ってる、長いソーセージみたいな」「ああ、ギョニソね」「いや、魚肉じゃなくて。ちゃんと豚肉の」「そんなの食ったことないよ」「えええ!?」「魚肉とカン違いしてんじゃないの」「……」。黙り込んでいると、周りの客もマスターも「妄想だよ」「ぜったい魚肉だよ」と追い討ち。

 こちらとしては、かつては毎日のように食べていたものなので、周りが「ギョニソしか知らない人」だらけなのが信じられない。もしや遠い昔に製造中止にでもなってしまったのだろうかと、実家(関西)の妹に「ポールウインナーって今でも売ってる?」とメールしたところ、「今まさにウチの冷蔵庫にある」と即答が……。「要するに関西ローカルだったということか」と安堵すると同時に、ひとつの疑問が浮上してきた。すなわち「なぜ、ポールウインナーは全国区に広まらないのか」という疑問が。

 誇張抜きで、ポールウインナーは関西のあらゆるスーパーで売られている。関西ローカルとはいえ、これほどメジャーな存在ならば(しかもウマい)、全国へ紹介されてもおかしくないのでは? その疑問を、ポールウインナーの発売元である、伊藤ハムにぶつけてみた

(※なお、「ポールウインナー」は商品名。「オレンジ色のセロハンに包まれた、豚、牛、マトンなどを原料とするソーセージ」は、関西エリアでは各社からさまざまな名称で発売されているが、その元祖が1934年に発売された、伊藤ハムの「ポールウインナー」なのである)

 伊藤ハム広報室によると、「現在、ポールウインナーは年間1億本売れているが、その95%は関西での消費」だという。兵庫県西宮市で創業した伊藤ハムは、従来の羊腸などに替えて、ウインナーのケージングにセロハンを採用した「ポールウインナー」を主力商品として成長していく。その過程で、同商品は関西エリアで一気に広まったものらしい。昭和40年代には、兵庫県、大阪府を中心に学校給食などで多く採用されていた。そのことも、関西における根強い人気に繋がっているといえるだろう。

 では、これまで全国進出を考えたことは?

「もちろんあります。箱根の関を越えるのは、我々の悲願です。でも、これまでうまくいったことがないんですよね……」(伊藤ハム広報室)

 その理由を、同社はこう分析する。

「おそらくですが、外見が魚肉ソーセージに似すぎているんだと思います。さらに、ポールウインナーは10本入りの定価が550円ですから、魚肉ソーセージと比べれば割高感がありますよね。まったく別の食べ物と考えれば手にとっていただけると思うのですが、なかなかそこまで至らないんです」

 やはり、ネックは「魚肉ソーセージ」の存在だった。

「実は3年前に、全国区のTVバラエティで紹介されたことがあり、当時は関東からの引き合いも増えたんですが、一時期だけでしたね……(苦笑)」

 一方で、関西から異動してきたビジネスマンなどが、懐かしの味を求めて「関東では買えないのか」などと問い合わせてくるケースも増えており、同社では2000年代初めから同社サイト上でポールウインナーの通販を開始している。興味を持たれた読者は、ぜひお試しあれ。

 基本的な食べ方は「小腹がすいたときに、そのままかじる」だが、広報室のオススメは「セロハンのまま茹でる」という食べ方。脂の旨味が増すそうだ。発売当初は、大阪の飲み屋で「ウインナー、燗つけて」と頼むオヤジたちの姿が散見されたとか。家飲みのお供にいかがだろう。


取材・文/琵琶子




おすすめ記事