実は先進国トップの貧困率だった日本。貧困の波は年収500万円サラリーマンにも押し寄せている
10/28発売の週刊SPA!に掲載されている特集『[新型貧困]7つの大罪』では、我々を貧困の穴に突き落す7つの原因(「非正規増加」「転落転職」「ブラック企業化」「うつ発症」「介護地獄」「家計破綻」「未婚化」)について徹底的に考察。それらの要因がもとで貧困化したサラリーマンたちの実例もあわせて紹介し、「どうすれば貧困の波に呑みこまれないか」について言及している。誰もが当事者たりえる貧困問題、10ページの大特集につき、一文字も読み飛ばさぬようご一読いただきたい! <取材・文・撮影/週刊SPA!編集部>
【東京ユニオン書記長・関口達矢氏】
正社員、有期雇用、アルバイトなど、さまざまな雇用形態の労働問題を担当。NPO法人派遣労働ネットワークの理事も務める
【人事コンサルタント・城繁幸氏】
労働・社会保障問題に詳しい。人事制度、採用等の各問題について各メディアで発信。『若者を殺すのは誰か』など著書多数
【社会学者・阿部真大氏】
甲南大学専任講師。専門は労働社会学、家族社会学。近著に『地方にこもる若者たち 都会と田舎の間に出現した新しい社会』
今までSPA!では何度も「貧困問題」について特集してきたが、年収500万円という平均的なサラリーマン層(中間層)にも“プアの波”は押し寄せている。
経済規模を表すGDPこそ世界第3位の日本だが、貧困層は確実に広がっている。まずは、等価可処分所得の中央値の半分の額を「貧困線」(’12年は122万円)といい、それに満たない世帯の割合を示す「相対的貧困率」は16.1%。これはOECDに加盟する34か国のなかで第4位。さらに、大人が一人(つまり母子・父子世帯)に限ってみれば貧困率は54.6%で、これは世界第1位の低水準となる。SPA!本誌が再三取り上げてきた貧困問題は新たな局面を迎えているようだ。
労働組合東京ユニオンの関口達矢書記長は、現状をこう見ている。
「アベノミクスで景気がよくなったといわれても、それを実感できているのは、一部の富裕層に限った話。雇用の流動化を進める安倍政権が目指すのは、1%の富裕層が富を独占するアメリカのような超格差社会です。すでに、正社員の労働環境も不安定化しており、中間層が下に落ちてきています」
中間層にまで貧困が拡大する現状の流れにはあらがえないのか。労働問題に詳しい人事コンサルタントの城繁幸氏は次のように語る。
「30年後には一人の現役世代が一人の高齢者を支える超高齢化社会が到来することは周知のとおりですが、その流れは企業内にも起きています。たとえば90年代、30代前半だったソニーの正社員の平均年齢が今は42.5歳。パナソニックでは45歳です。40歳で課長なんて『島耕作』の世界だけの話で、現実には50歳になっても平社員のままなんてことが容易に想定できます。新興国が10分の1以下の人件費で参入してきているグローバル化の流れと合わせて、中産階級は貧しくなる一方です」
給料頭打ちの閉塞感は、負の連鎖に繋がると見ているのは社会学者の阿部真大氏。
「個々の意識がディフェンシブになればなるほど、経済全体が萎縮していき、それはそのまま収入にも反映してくる。そもそも経済成長とは、自由に元気に活発に、みんなが未来を見て仕事に打ち込むことが大前提。共産主義や社会主義がなぜ失敗したかといえば、その活力を労働者から奪ったからですよね。今の日本社会は、そうした悪循環に陥っています」
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