民主党執行部は「大本営作戦家」!? 落選議員が語る【民主党崩壊】の理由Vol.4
民主党政権はなぜ崩壊してしまったのか? エコノミスト・飯田泰之氏と評論家・荻上チキ氏が、民主党前衆議院議員の3名と鼎談を行なった。 参加してくださったのは、先の衆院選で残念ながら議席を失った池田元久氏、田中美絵子氏、宮崎タケシ氏。週刊SPA!2/5・12合併号「週刊チキーーダ!」では紹介しきれなかった、“ほぼ全文”をここに掲載しよう。
⇒Vol.3『“印籠”と化していた「マニフェスト」』 https://nikkan-spa.jp/382179
田中:民主党は自民党政権では行ってこなかった、現役世代と子育て世代に光を当てていくという政治を行ってきました。この層をターゲットにしたのは画期的です。今後も民主党は社会保障の充実、福祉国家を目指す、弱者に光を当てていくという理念は捨てずに、やっていってほしいと思ってます。もちろん、私もそういった国づくりを行っていきたいと考えてます。
個人的にも、ねじれ国会の影響でザル法になってしまった派遣法改正ですとか1年限定の基金で行っていた子宮頸がんワクチンの無料接種の恒久化など、心残りがあります。
私自身、1割しかいない女性議員の一人だったんですけれども、今回の選挙で衆議院議員の女性議員の割合は約8%。今後、女性目線の政策というものも、これからどんどん欠けていくのかなと思うと、そこも不安に思っています。
宮崎:民主党という政党は結党の由来から考えると、「双頭の蛇」なんですよ。イデオロギー的な頭がふたつある。ひとつは、いわゆる政官財の癒着を断ち切る、予算カットを含め、それに伴うさまざまな改革を目指すというもの。もうひとつは、再配分重視でヨーロッパ流の福祉国家を目指すというもの。このふたつを掲げた「双頭の蛇」なんですが、前者を担う党はたくさんあります。
飯田:いかにも、みんなの党、維新の会ですよね。
宮崎:その現状を考えれば、いまの民主党は、後者の「再分配重視」の方向性でいくべきだと思います。たとえば、そもそも高校授業料の無償化なんて当たり前の話で、途上国も含めほぼ全ての国が批准している国際人権規約にも「高等教育は段階的に無償化しなくてはいけない」と書いてある。
いまどき良いの悪いの言っている国内の議論はまったく的外れ。子ども手当てにしても、少子化対策として現金給付が効果的なのは欧州を見ても明白で、「財源がないので、当面ここまでしかできません」という言い方ならわかるが、「正しくないからやめましょう」なんて議論はおかしい。民主党が立ち直るかどうかは別にして、必ず再分配重視の政党というのは必要です。世界的にも二大政党は、自由競争を重視する中道右派と、再分配を重視する中道左派で構成されるものですから。
飯田:景気が悪いと、世論は保守化していくという傾向があります。同時に保守政党はもともと経済に強いという定評があり、そのイメージどおりに経済がよくなっていくとなると、自民党への支持は強くなる一方でしょう。その中で、自民党に対するカウンターパートとして、民主党はどこを目指すべきだと思いますか?
池田:僕は1996年の民主党結党から参加していて、2009年の政権交代は自分自身の政治活動の結実でもあった。それが非常に残念な結果に終わり、この無念さは一言ではとても語りつくせるものではない。とにかく、野田前総理が解散を宣言したときに思ったのは、「有権者に申し訳ない」という一点です。
デフレで不況がこれだけ深化している中で予算編成を投げ出し、税制改正もやらない。これは政権与党の責任・義務の放棄ですよ。しかも、予想したことではあったが多くの仲間が討ち死にした。今は「再建」という言葉も簡単に口にできない状況です。
野田前総理を悪く言うわけではないが、あの解散は彼が自分自身の言葉に引きづられての決断だった。大局を見ずに「言ったことは守る」レベルの話になってしまった。
飯田:昔からいわれる松下政経塾的な優等生気質ですかね。
荻上:筋論のレベルが低い、と。
池田:全体を見る大局観や、自分やグループではない“公”に対する責任感が乏しいのではないか。そう考えると、民主党の失敗のひとつひとつに説明がつくんですよ。あまりに犠牲は大きかったわけですが。
宮崎:僕は反主流派として、外から見ているときに、菅内閣、野田内閣の首脳陣って、ゲーム感覚なんですよ。盤上でゲームをしている感じ。一つ一つの行動や決断にリアルさが感じられない。僕は今回の解散にいたる経緯において、野田政権の中枢を揶揄して、「大本営作戦課」と表現しました。
本来、総力戦に勝つためには、組織全体の体力や生産力、兵站など大局を見て決断すべきです。目の前の戦場だけで勝っても、生産や補給が続かなければ最終的な勝利にはつながらない。しかし彼らは局地戦しかみていない。この盤上ではどうかというだけ。だから、「小沢を切れば支持率が上がる」的なそんな話になってしまう。
池田:ただ、厳しく言うと、民主党はそういう人をも受け入れてきたというのがある。だからこそ、本当によく考えなくてはいけない。もう一度、パイを集めて結合するのではなく、「公のためにこれをやりたい」という人物を改めて結集するしかない。促成教育はダメです。リベラルとかアンチリベラルとか、コンサバティブとかではなく、その前に、人間的に本来、やるべき人物かどうかというのを見た上で、結集しないと、また、同じようなことを繰り返すことになる。
宮崎:民主党が生き残るというときに、第二極として生き残るのか、穏健なる多党制の一つとして残るのかそれはわかりません。しかし、二大政党制を目指してきて、実現し、頓挫したのは事実であり、つまり、日本の選挙制度の流れにおいて、これまで20年間積み上げてきたものを喪失した。羅針盤がない状況であることの自覚は必要ですよね。
荻上:誰を見て政治をするのかを見失わないことですよね。例えば「弱者のため」とは言うけれど、具体的に誰のどういった困ってるポイントを、どう改善するのかという筋道も見えないまま、手続き論や筋論ばかりが先行させるのは、微妙と言わざるを得ない。
その意味では、落選した議員の方は、有権者の「顔」を見るためにこそ、次の選挙までの期間を有意義に使ってもらいたいですね。一方、有権者もまた、こちらから政治家に会いに行くなりして、「俺、ここにいるよ」ということを示しつつ、政治家に「自分はこういったものが見れていなかった」っていう反省を促す。向こう3年なりの期間は両者にとって、大事な期間になりそうです。
今日はありがとうございました―――
【池田元久氏】
1940年、神奈川県生まれ。NHK政治部記者を経て、1990年の衆院総選挙で、始めは無所属、途中より日本社会党公認として出馬し初当選。1993年に僅差で落選。社民党を離党し、1996年、民主党の結党に参加する。1998年の金融国会を主導。菅内閣では財務副大臣、経済産業副大臣を務める。民主党デフレ脱却議連会長。http://www2u.biglobe.ne.jp/~IKEDA/
【宮崎タケシ氏】
1970年、前橋市生まれ。上毛新聞記者を経て、2009年の衆院選で群馬1区で初当選。デフレ脱却議員連盟事務局などの役職を務めた。ライトノベル作者というもうひとつの顔も(ペンネーム鷲田旌刀)http://www.miyazakitakeshi.jp/
【田中美絵子氏】
1975年、金沢市生まれ。会社員、添乗員、議員秘書などを経て、2009年衆院選で、「小沢ガールズ」として石川2区より出馬。小選挙区では落選するも比例で復活当選。先の選挙では東京15区へ国替えし出馬するも落選。http://www.tanakamieko.jp/
<構成/鈴木靖子 撮影/山川修一>
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