第67回

02年5月20日「二人羽織」

・「奇跡の天才詩人」疑惑は、現代の親子関係の問題を象徴している。他人事と思えない人も多いはずだ。例えばひきこもりの子の親はたいてい高度成長世代である。自分の子供とは対照的にいつまでも元気で、働くことをやめられない。親のぶんの休息を子供がしてあげてるわけである。それだけじゃなく政治家にだって会社の経営者にだって「親子二人羽織疑惑」のある人はいっぱいいる。

・ところで森川幸人さんの『テロメアの帽子』という絵本が素敵。遺伝子の仕組みを思いっきり抽象化して絵物語にしている。遺伝子ってとてもドラマチックなものだ。そのドラマはどれも、とても残酷なものだ。


02年5月21日「絶倫ヨーダ」

・『スター・ウォーズ・エピソード2 ~クローンの攻撃~』試写。スター・ウォーズの最大のテーマは「親子関係」だと思うが、なるほど今度はクローンと来た。

・超絶映像を溢れ出さんばかりに詰め込んで、物量作戦ここに極まれりといった感じ。資本主義の勝利といえるか。しかしストーリーは壊れている。これほどのことをやり尽くすにはストーリーなんかに構ってらんなかったのだろう。そういう意味では資本主義の破綻ともいえるか。

・ただし登場人物の人間関係はきっちり矛盾無く作り上げられていて、感心させられる。主人公とヒロインがその後オリジナル3部作のあの2人の両親になるわけで、それを前提に注意深く見てると脇役にもとても重要なキャラクターをいろいろ見つけることができる。

・さてこのシリーズに描かれる未来において人類は、物質文明の先に精神世界へと入っていく。その象徴が老師ヨーダである。そのヨーダが、今回は思いきり前線に出て戦う。司令官として戦闘機に乗り込んで吠えまくるのだ! いやそれどころか……。見てみて下さいぶっとびますよ。

02年5月22日「四半世紀もの」

・私事ですが。「ビンテージのジーンズですか」と聞かれてよくよく思い出してみたら、今履いてるこのジーパンを買ったのは中学2年の時だ。ちょうど『スター・ウォーズ』の最初の公開(1977年)の頃。

・年より若く見てもらえることが多いが、それで喜んではいけなかった。ただ、ずーっと同じ格好し続けてるからだったのだ。就職とか、彼女ができるとか、服のラインナップが一気に変わる機会が、いっぺんもなかったので。

02年5月23日「怖いシミュレーション」

・『es』試写。2回も満員で入れなかったのであきらめかけてたら追加試写をやってくれた。業界では相当な話題になってるってことだ。

・とある心理実験の模様を描く。カメラを設置した模擬刑務所で「看守」と「囚人」の2組に分かれて暮らす……ただこれだけのことで、被験者達はものすごいスピードで狂いはじめる。

・こういう実験は1970年代までは実際に行われていたようだが、人権の問題で今は禁止されている。24時間監視されながらある役割を演じ続けることによって、人はどう変わっていくか。そのデータは今は貴重だと思う。

・個人から生放送できるようになるブロードバンド時代、人々は何を演じはじめるのか、そしてその精神はどう変容していくのか。そのシミュレーションが必要だと思うのだ。これから、かなり怖いことが起きそうな予感がする。実験室ではなく現実社会で。電波少年見て笑ってる場合ではない。

2004.08.03 |  第61回~

PROFILE

渡辺浩弐
渡辺浩弐
作家。小説のほかマンガ、アニメ、ゲームの原作を手がける。著作に『アンドロメディア』『プラトニックチェーン』『iKILL(ィキル)』等。ゲーム制作会社GTV代表取締役。早稲田大学講師。