第73回

02年6月27日「ウルトラ(ピー)スモス」

・古い話ですみませんが。タレントがスキャンダル起こした時に、その関与作品について、既に完成しているものまで改変する、というのはメディア企業の姿勢としてはどうか。デジタル編集の技術でそれが安易に出来てしまうようになってるだけに、やる前にちょっと考えてみてほしい。ある種のファシズムを加速することになりはしないか。今もう一度オーウェルの『1984年』読もう。

・それから有名人が罪に問われたりしたとき、それをひたすら面白がったり叩いたりするのはマスコミに任せておけばいい。ネット上では、ファンは事件の裏を考察していってもよかった。今、すごく興味があるのは警察のスタンスについてだ。かなり臭いませんか。

02年6月28日「生死を超えて時空を超えて成就する恋」

・病死した夫の保存精子を人工授精して出産した女性のことが報道されている。同様の件は水面下では既に多数行われているはずであり、法整備も、倫理についての議論も既に遅い。だから渡辺浩弐の小説を読んでおけばよかったのに。

・精子や卵子は凍結、乾燥など簡単な方法によって半永久的に保存できる。そしていつでも再生することができる。とすると、たまたま今この同時代に生きている人間どうしで恋愛し、結婚し、子供をもうける必要はもう、ないのだ。

・例えば過去の芸術家に恋する、なんてことはよくあることだと思う。その芸術家の子供を妊娠する、なんてことも今後は可能になっていくわけだ。つまり時空を越えた相手との恋愛を成就させることができる。

・自分のDNAと本当にぴったりの相手は、もしかしたら自分の死後一千年後に現れるかもしれない。今この世界に見切りをつけて、遺伝子だけ遺して死んでしまう……なんて「生き方」もあるかも。しかし、死後ずっと経ってから自分の遺伝子の価値を誰かに発見してもらうためには、やはり、生前に自分の価値をとことん発揮しておく必要がある。

・その価値とは、もちろん金や地位とは別の、もっと本質的なものである。

02年6月29日「僕はO型ですが」

・おお、幻冬舎さんのウェッブページで僕のことを占って下さっている。ありがとうございます
(ずいぶん前にやって下さっていたのを今ごろめっけたのだ)。しかしこれで僕が福岡出身ではなく本当は宮崎出身だということが微妙にばれるな。

・相当に詳しく、きちんと、丁寧にコメントして下さっている。「表的な人生は太陽で、実業的なことをしていき、自分の中にある私的な危なさは、作家生活の中で解消すれば、これは良い活かし方になるというわけです」とか、こういう占いなら当たろうが当たるまいが人生のアドバイスとしてとてもありがたい。

・ところで占いは今非科学的だという前提で許容され、一種のヒーリングとしてうまく役立てられていると思う。ただし、「血液型占い」については科学的なものだという誤解がちょっとあるような気がする。

・以前通った自動車教習所では、授業の時間を使って「血液型から見た事故の傾向と対策」なる講義を行っていた。しかもその時使われたプリント資料は警察の交通課から配られたものだと言うではないか!

02年6月30日「露出趣味」

・喫煙者バッシングがまた強まっている。歩きタバコに実刑を与える条例は東京・千代田区だけではなく今後あちこちの地方自治体で決まりそう。法律も改正されるかもしれない。嫌煙カフェいやスターバックスに行って聞き耳をたてるとすごい悪口の嵐だ。歩きタバコの人を狙った当たり屋計画とか、ガソリンぶっかける計画、なんてのも耳にするから気をつけて。

・ここだけの話僕は愛煙家なんだけど、一人の時にしか吸わないのでオフィシャルには非喫煙者ということになってる。タバコ吸うのってオナニーとか排便と同じような極私的な快楽行為だと思うから、なんか人に見られるのって超恥ずかしいのだ。

・街歩きながらオナニーしてる人がいたら嫌でしょ。しかも白いものをあたりに振りまきながら歩いてたら。非喫煙者にとって歩き煙草はそういうふうに見えるものなのである。

2004.09.13 |  第71回~

PROFILE

渡辺浩弐
渡辺浩弐
作家。小説のほかマンガ、アニメ、ゲームの原作を手がける。著作に『アンドロメディア』『プラトニックチェーン』『iKILL(ィキル)』等。ゲーム制作会社GTV代表取締役。早稲田大学講師。