第75回

02年7月6日「環七地下50メートル」

・環状七号線の地下に世界最大のトンネルがあることをご存知ですか。杉並の高円寺~方南町のあたり。周辺の川と繋がっていて、水害予防のため、台風等の非常時に水を流し込むことができるようになっている。見学会があったので参加してみた。

・地下50メートルの場所に直径12.5メートルのトンネルがすぽ~んと空いている風景はなかなか凄い。それが1年のうち360日くらいは何ごともなくただひんやり静止しているのだ。

・その中を2キロ弱歩かせて頂いた。この深度になるとは電磁波ノイズが限りなくゼロに近付く。そのせいか身も心も冴えわたる気分。途中で一度全ての照明を消して下さった。全くの無音、無光の空間では自分の肉体が曖昧になっていく。そして数十秒も過ぎると不思議な幻覚が見え始める。


02年7月8日「全裸になるところだろう?」

・『リターナー』試写。日本にはSFアニメがある。それを、過去のSFX映画をお手本に丁寧に実写化すれば、もしかしたらハリウッド作品に迫れるか!?というチャレンジ。

・大がかりなセットやロケを、実写とCGの合成で代用しているが、そのテクが実に巧妙で、日本のSFX映画にありがちなビンボー臭さをうまく逃れている。ただ、おかげで予算に関係ないところで、ハリウッドとの差が見えてしまった。例えば、突っ込みどころ満載の破綻したシナリオ(特にラスト、タイムパラドックスについて小学生でも気付くようなストーリー破綻がある)。

・鈴木杏ちゃん演じる少女戦士が未来からタイムスリップしてきた時に全裸じゃなかったことも怒髪天をついた。と、ここまで読むとつまらない映画のように思えるかもしれないけど、実はすごく面白い。百難あっても見る価値があるし、この先この方法論でさらに作り続ければもしかしたら……と思わせるパワーもある。製作元のロボットは次は深作さんと組んだらどうか

02年7月9日「ネコ耳少女ハァハァ」

・ジブリの新作『猫の恩返し』試写。女のコとネコが好きなら身もだえして見るしかない。

・この作品は『千と千尋』や『もののけ姫』よりも欧米向きだと思う。日本のおたく文化50年が産み出したネコ耳少女のパワーを世界に見せつけるなら、今がチャンスということだろう。

・併映の『ギブリーズ』は実験映画だ。メジャーなチームが実験的なことをやってみるための場所として、あえてショートムービーの枠を作った、ということだと思う。ショートムービーを作って認められたクリエーターが長尺に挑戦した『ウェイキング・ライフ』と逆のパターンだ。

・メジャーになってからも新しいものを生みだし続けるために、そういう場所を意識的に持つという姿勢は正しいと思う。特に劇場映画では実験的なことがやりにくいだろうから。いや、やってたっけ『山田くん』で。

2004.09.26 |  第71回~

PROFILE

渡辺浩弐
渡辺浩弐
作家。小説のほかマンガ、アニメ、ゲームの原作を手がける。著作に『アンドロメディア』『プラトニックチェーン』『iKILL(ィキル)』等。ゲーム制作会社GTV代表取締役。早稲田大学講師。