第79回

02年8月7日「不景気だからこそ」

・デジタルコンテンツ協会の「ジセコン」予備審査会。デジタル系プロジェクトの提案を受け付け、優秀なものに対して国が1件¥1000万程度出資するというものだ。

・去年の同様事業(プレミア・プロジェクト)では個人クリエーターからの応募が多かったが、今年は大企業からの応募も多い。上場企業ですら、実験的な先取りプロジェクトに先行投資の予算がつきにくい状況があり、まずは支援金でリスクを回避したいということらしい。そういう時代だからこそ新しさを重視して審査したくなる。一見無茶に思えるような計画書については、関連の最新技術動向などについて本審査までに勉強しておかなくてはならない。

・将来的には「PAYPAL」のようなシステムを使って、例えば面白いホームページをやってる将来有望な人に100万ずつ、ばらまいてみたりするのもいいかもしれない。

02年8月8日「遭遇!」

・漫画家・木ノ花さくやさんの取材に便乗して、超能力者の秋山真人さんのオフィスを訪問。ビルの屋上のUFO型ペントハウスにある、秋山さんの思索ルームで話を伺う。

・木ノ花さんの作品『エンカウンター』(週刊『コミックバンチ』連載中)は、超能力など各種不思議現象を、科学的な視点で捉えて物語に取り込んでいる。そのあたり僕の仕事とも接点があり、話が合うのだ。

・秋山さんはとても合理的な、冷静なスタンスから様々な能力や現象について説明してくれた。しかし僕が一番驚いたのは秋山さんの前に置かれていたグラスの中の麦茶が、秋山さんが飲まないのにどんどん減っていったことである。気付いてるはずなのにちっとも驚かない木ノ花さんもすごい。

02年8月9日「グンペイズム継承」

・CGアニメーション『プラトニックチェーン』の制作現場に。3分間のショートムービー・シリーズ全24話がほぼ完成に近付いている。今日は各雑誌の取材陣をモーションキャプチャーの現場に招待して、いろいろ質問も受けた。

・映像の新しさだけで結構驚いてもらえるんだけど、実はそれほど特別な、例えば特許技術などは使っていない。ただ、各ジャンルで最新の技術を既に使いこなしてるスタッフが集まっているところがミソだ。こなれているシステムをうまく組み合わせた手法なのである。故・横井軍平さん提唱の「枯れた技術の水平思考」だ。

2004.10.24 |  第71回~

PROFILE

渡辺浩弐
渡辺浩弐
作家。小説のほかマンガ、アニメ、ゲームの原作を手がける。著作に『アンドロメディア』『プラトニックチェーン』『iKILL(ィキル)』等。ゲーム制作会社GTV代表取締役。早稲田大学講師。