第164回

5月13日「小さな最終兵器」

・武器は、戦いが始まる前にあらかた奪われていた。その上で敵は圧倒的な兵力をもって取り囲んできた。彼はあきらめなかった。遂に踏み込まれた。住む家を壊され、街を焼き尽くされた。親兄弟や友を、殺された。そして恋人を、殺された。それでも、あきらめなかった。捕らえられ、隠し持っていた刃物は取り上げられ、服は全て脱がされ、縛り上げられ、電流コードを繋がれ、猛犬をけしかけられ、殴られ、蹴られて、しかしまだ、あきらめなかった。全裸ではいつくばる彼の前では銃で武装した敵がげらげら笑っていた。そんな状況から逆転できるなんてことを、どんな神様が考えるだろう。何度も何度も、殴られ、蹴られ、殴られ、蹴られ、足と背骨がいかれてしまい、もう、うまく起きあがれない。しかし、彼は決してあきらめなかったのだ。固く冷たい床の上に倒れ、唾を吐きかけられながら、血に滲む視界の中に、彼は発見した。最後の武器を。火より毒よりおそろしいものを。それは、猿のようにはしゃぎ続ける奴らの手の中にあった。それは、自分に対して向けられていた。しかし、彼はわかっていた。それが奴らではなく、自分のためにあることを。その小さな武器が、すぐに、あの国を爆撃することになる。それは核兵器より大きな効果を奴らに与えることになる、と、彼はそう知っていた。彼は念じる。さあ撮れ。俺を、この無様な姿を撮れ。

カシャッ!

5月14日「平和な国」

・ケータイゲームやってるのが情けないんじゃなくて、テトリスくらいゲーム機使わないで脳内でやれないのが恥ずかしいと思う。ていうかマンガ読んでる人もいるんですね国会で。

5月18日「開拓者たち」

・集英社に。デジタルマンガ賞@「少年ジャンプ」の受賞者と会う。未踏の領域を突き進む若い人達の表情はすがすがしい。こちらも元気がでてきた。

・デジタルマンガについては発表の形式が具体的にいろいろと見えてきていて、いよいよ収穫期が近付いてきている。即座にいろいろなプロジェクトをご一緒させて頂くことになりそうだ。がんばりましょう。

5月19日「クリエーターに儲け話」

・バンダイネットワーク社に。ケータイ端末向けにヒットコンテンツを量産している会社だが、ここで今とても面白いプロジェクトが進んでいる。ケータイ向けのゲームやアプリを募集して、すぐに課金コンテンツとして公開する。つまり有料で販売するわけである。パッケージソフトと違ってこれは即座の収益となり、もちろん制作者に還元される。

・ボーダフォン向けの『週刊ゲームLive』『週刊アプリLive』ではすでにサービスがスタートしている。アマチュアの応募作品をいろいろと見せてもらう。ファミコン創世記を思い出させる熱気を感じさせられ、ちょっと感動。本業の傍らで作ったゲーム1本で月に50万~60万稼いでるサラリーマンの方もいるらしい。第3世代ケータイのコンテンツプロデュースのモデルとして、こういう形体がまず、ありだと思う。デジタルマンガとかも、ね。

・このあたりを拠点にちょっと面白い新番組がまもなく立ち上がる予定もあり。続報します。

2005.12.19 |  第161回~

PROFILE

渡辺浩弐
渡辺浩弐
作家。小説のほかマンガ、アニメ、ゲームの原作を手がける。著作に『アンドロメディア』『プラトニックチェーン』『iKILL(ィキル)』等。ゲーム制作会社GTV代表取締役。早稲田大学講師。