第212回

5月1日「ムシキングの女子版は」

・セガの『オシャレ魔女 ラブandベリー』はムシキングと同タイプの筐体で、カードを集めつつ遊ぶアーケードゲームだ。が、こちらは昆虫の代わりに街中でギャル属性(オシャレまほうカード)を採集する。CGの女のコキャラに着せ替えやメークをさせ、踊らせて戦うのである。オシャレパワーの大きさによって「いけてる度」がアップする。もちろんターゲットは小学生女子だ。けどここに”大きなお友達”が参入してくるのも時間の問題と思われる。

・もう一つ。VANCE(GSIクレオス)発の着せ替えフィギュア『ピンキーストリート』も、今のところは女性ティーンにヒットしている商品だが、エヴァや天上天下とのコラボ(綾波仕様のプラグスーツとか)も出してるところが抜け目ない。シャープでファッショナブルなデザインでありつつ、萌え要素も押さえている。10代女子の次、いきなり30代男子に広がるというパターンかも。

5月2日「写美ファンだけど……」

・東京都写真美術館『超(メタ)ヴィジュアル』展。岩井俊雄さんが気になっている方は「時間層�U」をちゃんと見る良い機会だ。それ以外にもポスター、彫像、CG作品、ミュージックビデオ、ゲーム、……、と並んでいる作品はどれも素晴らしい。のだけど、そのラインナップの仕方があまりに散漫で驚いた。黎明期の映画作品が上映されていると思えば、明和電機のパフォーマンスが流れる。万華鏡や影絵も、3D映画のポスターも、「リンゴを貫く弾丸」の写真もある。iPODによる写真作品のショウイングもある。

・この範囲の広さには思想があるわけではない。ビジュアルに関連したものを古今東西全て対象にしている、という以外に説明のしようがない。でもそれでは「美術館」そのものの定義になってしまう。東京都写真美術館は、アーティスト力とは別の、キュレーター力の価値を理解させてくれる優良なハコだ、と思っていたが。

5月3日「大阪万博でも見た」

・写真は表参道のカフェmontoak。期間限定でミストカフェになっていた。建物自体が中谷芙二子さんによる「霧の作品」である。かつては万博のような場所でしか出来なかったアートが、今は街中でできるのだ。ショウイングスペースとしての都市空間は散漫ではなく猥雑であり、その意味で東京は今とても良いインフラだと思う。ただし、そんな時代における万博や美術館の存在意義については、しっかり考え直さないとまずいわけである。

2006.02.04 |  第211回~

PROFILE

渡辺浩弐
渡辺浩弐
作家。小説のほかマンガ、アニメ、ゲームの原作を手がける。著作に『アンドロメディア』『プラトニックチェーン』『iKILL(ィキル)』等。ゲーム制作会社GTV代表取締役。早稲田大学講師。