第253回

3月16日「ひらきこもり実践編」

・『ゲームラボ』誌で「三十才のハローワーク」という新連載が始まった。「ひきこもりの人」を募集しているので該当の方はチェックよろしく。

・この企画の目的は「ひきこもりをビッグにする」ことだ。というのは大げさかもしれないんだけど、ちょっと真面目に言うと、ひきこもって何かに熱中している人がその延長で稼いで食っていく方法をいろいろと考えて、試してみようってわけです。

3月20日「ネットから紙へ:プロの仕事」

・単行本バージョン『とるこ日記』届く。3人の若手人気作家(定金伸治氏・乙一氏・松原真琴氏)によるトルコ旅行の記。

・j-BOOKSサイトで連載されていたコンテンツが、あまりにもネット用に作り込まれていたものだったから、これ本にするのは大変だろうなあと思っていた。しかし、きっちりと作り直し、まとめ直し、書き下ろし、これにはこれで別の価値を持たせているところはさすがである。素人さんのブログ本リリースがブームだが、プロはここまでやるんだぜ、というお手本を見る思い。

・内容は、男子二名と女子一名で旅をしてちっとも色気がないところとか事件といった事件も起こらないのにむしょうにおかしいところとか『ストレンジャー・ザン・パラダイス』みたい。旅行記というよりロード・ムービーとして読み直してみよう。

3月23日「大企業も新人も」

・「東京国際アニメフェア2006」@東京ビッグサイト。今回ここで強く感じたのは、アニメ業界の「巨大化」と「細分化」の両方が加速していることだ。アニメはコンテンツとしてのフルデジタル化がほぼ完了していて、それを前提に制作方法だけでなく流通方法も、激変しつつある。今や携帯電話もパチンコ台も、アニメのインフラになっているのである。当然ビジネススタイルはダイナミックになっていく。その潮流を乗り切るべく大手メーカーの合併や系列強化が進んでいるわけだ。今回ここに並ぶ大作には、アニメとマンガ、ゲーム、あるいは実写コンテンツなどまでをトータルに仕掛けていく戦略のものがとても多い。

・ところが配信・収益の方法が多様化しているおかげで、インデペンデントなスタンスのクリエーターのチャンスも、実はかえって拡大している。例えばケータイ向けショートアニメの配信が続々とスタートしていて、多くの若手クリエーターがそこに向けての作品制作に取り組んでいる。

・新進クリエーターの業界プレゼンの場として用意された「クリエーター・ワールド」コーナーは、毎回見逃せない。ネットのフラッシュ文化から登場した才能も頭角を現し始めている。

2006.03.16 |  第251回~

PROFILE

渡辺浩弐
渡辺浩弐
作家。小説のほかマンガ、アニメ、ゲームの原作を手がける。著作に『アンドロメディア』『プラトニックチェーン』『iKILL(ィキル)』等。ゲーム制作会社GTV代表取締役。早稲田大学講師。