第257回

4月8日「モノとしてのゲーム」

・コントローラーの中にゲーム機本体とレトロゲームソフトがまるごと入っている、という商品『Let’sTV プレイCLASSIC』(バンダイ)が発売になり、サンプルが届いた。

・次世代ハード戦争の最前線でゲームソフトは「形を失いダウンロードコンテンツになっていく」進化の道を邁進しているわけであるが、それと全く別方向に「ハードと一体化して1個1ゲームの『モノ』として売られていく」進化枝が現れたわけである。この先も結構面白いと思う。

4月9日「あえてアナログに」

・『ファイヤーウォール』←映画のタイトルとして見ると実はとても美しい言葉ですね。ハリソン・フォードが銀行のシステム責任者を演じる。妻子を人質にとられ脅迫され、会社の重要データにハッキングする。携帯電話、小型カメラなど今どきのガジェットをうまく使っていて、ディテールまで興味深い。

・高度にセキュリティーシステムが完成された世界だからこそ、アナログな活動が主体になる。だからこそ絵になるわけで。例えばバックアップできないデータを、モニターにスキャナーを直接貼り付けて読み取る、なんてシーンが面白い。そうでなければハッカーものは最初から最後までただキーボードを打ってるだけのシーンで終わってしまうわけである。安易にCGを使っていないところも良い。

4月10日「ギャグは寒くて当然」

・『アイス・エイジ2』。氷河期=氷に囲まれた世界の設定は、3D-CGにしやすい、静止した環境として選ばれたものであろう。そのぶんキャラクターの表現に力が入れられたわけだ。

・この第2作では、氷河期が終わる瞬間、という設定になった。温暖化によって氷が溶け始める。壊れ、崩れ、そして水が流れ出し、やがて大洪水になっていく表現は、第1作の大ヒットを追い風にした予算の拡大と、4年の歳月による技術の進化によって実現したものだろう。水の表現だけではなく、溶岩や間欠泉、あるいは環境変化による植物の繁茂などもきちんと描いている。

・キャラクターの表現も前回以上に緻密で、形と挙動ゆえにおかしくて可愛らしい動物達(マンモス、サーベルタイガー、ナマケモノ、etc.)が、毛並みの揺れで繊細な表情を作る。「君と私で種族を絶滅から救えるかも」なんて究極の口説き文句もある。ただしこの手のキャラはディズニーアニメのそれと違い2D 化されると途端につまらなくなるので、キャラクタービジネスは難しいかもね。

PROFILE

渡辺浩弐
渡辺浩弐
作家。小説のほかマンガ、アニメ、ゲームの原作を手がける。著作に『アンドロメディア』『プラトニックチェーン』『iKILL(ィキル)』等。ゲーム制作会社GTV代表取締役。早稲田大学講師。