第263回

5月27日「香虫」

・オオトラフコガネという昆虫を飼っている。特徴は、匂いだ。花のような蜜の
ようなすごく良い匂いがするのである。数十匹がいっせいに羽化したので、部屋
じゅうに香水をふりまいたようになった。
・マイナーな虫だが、見た目も美しい(黒地に金色の模様、つまりラムパンツ
柄)。「香虫」として流行らないかなあと思う。


5月28日「才能が逆流してきた」

・アジア映画専門のコンセプチャル映画館「シネマート六本木」にて、『デス・
トランス』観る。下村勇二監督は、3D-CGゲームのアクション演出で力をつけ
た人らしい。

・フルCGのキャラクターでも、動きをつけるためには専門の監督が俳優に演技
をさせて、そのデータを取り込んでいく作業が必要である。特にカプコンは早い
時期からその部分に力を注いでいて、ワイヤーアクションを駆使したモーション
キャプチャリングによって『鬼武者』シリーズや『デビルメイクライ』シリーズ
などの映像を生みだしている。下村氏は、そういう現場から頭角を現し、実写映
画デビューを果たしたというわけだ。

・ゲームのモーションには、様々な格闘や舞踏が取り入れられている。カポエイ
ラと剣法の対決など、映画の世界以上に過激な組み合わせも、日々試みられてい
るわけだ。この作品にはそういうノウハウがふんだんに取り入れられている。特
に格闘シーンは一見の価値あり。

5月29日「6年6月6日6時6分に6ゲットできたら……悪魔」

・『オーメン』試写。「666」は映画史上最高のキャッチコピーだと思う。リメ
イクの必然性は、映像技術の進化か、監督の思い入れか。「6年6月6日に公開し
たかっただけやん」という突っ込みは、しちゃいけない。

・冒頭に911事件などのニュース映像が使われ、新世紀に入ってからの世紀末的
様相が強調される。今、仮想敵との接点が国境ではなくなっている。最大の脅威
は身中にいきなり現れる。この物語の「自分ちの子が悪魔だった」という設定
は、そんな恐怖とうまくリンクしていくわけだ。

・ただしそういう時代に、よりどころにするべきものが「祖国」や「自由主義」
ではなく、「キリスト教」になっていくのがハリウッド映画の特性である。キリ
スト教文化に浸っていない僕らには、ちょっとハマりにくい雰囲気があるかもし
れない。『ダ・ヴィンチ・コード』面白かった人なら大丈夫かな。

2006.06.06 |  第261回~

PROFILE

渡辺浩弐
渡辺浩弐
作家。小説のほかマンガ、アニメ、ゲームの原作を手がける。著作に『アンドロメディア』『プラトニックチェーン』『iKILL(ィキル)』等。ゲーム制作会社GTV代表取締役。早稲田大学講師。