第313回

5月31日「これ以上は怖くなくていいです」

・『バイオハザード4 Wiiエディション』プレイ。立体空間をリモコン+ヌンチャクの二刀流でゾンビの居場所を探りながら進んでいく感覚が、ものすごく生々しい。Wiiの新しさは、画面だけではなく操作感覚まで3D化できることにもある。Jホラームービーには動けば動くほどに閉塞していく空間の怖さをうまく生
かした作品が多いが、その感性をゲームに持ってくることができるようになったわけだ。

・カプコンは多くの映画作家をゲーム制作の現場に導いた実績があるが、そのノウハウを今後ぜひここに生かして欲しい。

6月6日「恋愛運が上がる映画」

・渋谷ユーロスペースにて、「東京小説」というイベント上映を観る。安達寛高@乙一さん監督作品『立体東京 3D-TOKYO』と桜井亜美さん監督作品『人魚姫と王子』。つまり2人の小説家が監督した作品をカップリング上映する試み(6月15日まで *7月には大阪でもやるそうです)。

・両者ともに、つけようと思えば簡単だったはずのスポンサーや商業プロデューサーに一切頼らず完全に自腹で自己責任で仕上げたものだ。こういう活動は若くて意欲のある人達をすごく刺激するだろう。今はペン一本で小説を書くのと変わらないほどインデペンデントなスタンスで、映画だって作れてしまうのである。

・上映後、両監督と『立体東京』に出演している滝本竜彦さん、佐藤友哉さんによるトークショウ。安達さん滝本さん佐藤さんはこの映画撮影後に揃って結婚されたそうだ。つまり「恋愛運の上がる映画です」ということである。話は佐藤さんと奥さまの出会いの場となった合コンのことなどに脱線。

・ところで講談社BOXの太田編集長も見に来てた。「次の作品は?」という質問を受け壇上で頭をかきむしりながら延々とうめき続ける滝本さんを見て太田さんは「ポエムだ! 生きたポエムだ!!」と喜んでいた。

6月7日「小説の書き方」

・あじさいが咲いた。花言葉は「浮気」。そして花は猛毒を含む。また花の色はその場所の土壌の性質特に鉄分の量によって変化する。……と、これくらいの知識を使って1本ミステリー小説を書けるかもしれない。

・と思って根の周辺にずっと血液を振りかけ続けていたことがあるのだけど、花の色に変化はなかったよ。

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PROFILE

渡辺浩弐
渡辺浩弐
作家。小説のほかマンガ、アニメ、ゲームの原作を手がける。著作に『アンドロメディア』『プラトニックチェーン』『iKILL(ィキル)』等。ゲーム制作会社GTV代表取締役。早稲田大学講師。