渡辺浩弐の日々是コージ中
第316回
6月20日「禿げてる人は禿げない」
・『ダイハード4.0』試写。前作からなんと12年ぶり。そんな気がしないのは、ブルース・ウィリスが似たようなキャラで様々な映画に出まくり続けているからだろうか。今回のテーマはサイバー・テロリズム。おなじみニューヨーク市警ジョン・マクレーン警部補が、5000万人分の年金データを一瞬のうちに消してしまった悪党に立ち向かう。というのは嘘だが、まあそのような話。
・コンピュータ・ネットワークを経由してあらゆる公的データをコントロールする能力を得たテロリスト。まず交通網と通信網を分断し、次は電力を落とし、最終的には国民の冨のデータそのものをリセットしようとする。マクレーンは、オタッキーなハッカー、マット(ジャスティン・ロング)を連れてダイナミックなアクションと緻密なハッキングを同時に行い、犯人の一味を1人また1人と仕留めていく。そのサディスティックな快楽が今回も本領である。
・ハリウッド映画の横綱シリーズだから、やはりアメリカのアイデンティティーを強調する。まず、国の存在意義がネットワーク上のデータに移行していることが示される。それを守るためにマクレーンはもちろん、政府高官も警察もFBIも命がけで戦うのである。行政や司法が国民のデータベースを守れない(どころか、破壊したり漏洩させたりする)国家があるとしたら、としたら、そんなものは崩壊する、というメッセージがここにはある(?)
6月21日「精神病理版『フリークス』?」
・映画業界でマーケティングをしている人の話によると、「韓流映画」と「韓国映画」は全く別のものらしい。前者はペ・ヨンジュンやイ・ビョンホンが出てるやつ。後者は、作家性の強いカルト映画としてカンヌやヴェネツィアで高評価されるやつ。
・『サイボーグでも大丈夫』試写。これはRain(ピ)が出てるから前者だ、と思って見に行ったらたぶん仰天する。だって監督は『オールド・ボーイ』のパク・チャヌク。舞台は精神病院。そこにいる既知の外の人々の、様々な症例の様々な行動をねちねちと描写する。もう本当にしつこいほど延々と見せる。監督はこれだけがやりたかったんじゃないか、と疑いたくなる。
・典型的な韓国美女のイム・スジョンが拒食症の少女を演じる。鼻筋の内側の線が浮き立って見えるほどガリガリに痩せてみせている。彼女は自分のことをサイボーグだと気づいていて、ものを食べると体内の機械が壊れてしまうと思っているのである。Rain(ピ)演じる妄想病の青年が彼女の奇行と妄想に深入りしていく。そしてついには普通の食べ物を電気エネルギーに変換する装置を発明、彼女の体を切り開いて埋め込み手術をしてあげるのだ。このシーンが最高にエロティックでプラトニック。さらに、故障を心配する彼女に彼は「生涯アフターサービス保証」をつけてあげちゃったりする。つまりこれは韓流のパロディーとしてのフリーキーな恋愛映画なのである。そして最後はなんとセカイ系に着地する(!)からパク・チャヌクはすごいのだ。
6月27日「ケータイで働きケータイで稼ぎケータイで生活する」
・ショート・ショートのケータイ配信、始まったよ。「魔法の図書館plus」(iMenu>メニュー/検索>コミック/書籍>小説>魔法の図書館plus)もしくは「dwango.jp(ブック)」(iMenu>メニュー/検索>コミック/書籍>コミック>dwango.jp(ブック))で、「渡辺浩弐ショート・ショート傑作選集」。毎週水曜日に7話ずつ更新。7話で21円つまり1話あたり3円。
・ケータイ小説の世界っていったいどんなことになってるのか。自分で飛び込んでみてレポートしますね。