第318回

7月1日「中野ブロードウェイのグローバル化」

・秋葉原にいる外国人は観光客が多いが、中野に来るのは本気のオタクである。見物ではなく見学が目的の人達だ。中野ブロードウェイは中野区の肝いりで本格的に全世界オタク対応のプロジェクトをスタートした。その第1弾として、4カ国語によるオタク向けガイドマップを配布しているんだけどこれ、よくみると館内写真のあちこちになぜかあのセバスチャン氏が映り込んでいる。中野区は彼をアドバイザーに使っているのかも。

・サブカルについては他人の目線を気にせず熟成させるべき時期がある。外面や体裁を気にした瞬間に失われる曖昧で恥ずかしいもののなかに本質があったりする。そこに気づくことが……いや、気づかないふりをして見過ごしておくことが、重要だ。

7月5日「クラシックの入口」

・スクウェア・エニックスがDS対応の趣味教養ラインナップ「DS:Style」シリーズをスタート。その第1弾『地球の歩き方DS』(タイ・イタリア・フランス)『花咲くDSガーデニングLife』『DSでクラシック 聴いてみませんか?』届く。インターフェイスが練り上げられていて、すごく便利に使えそう。そして実用の場でなくても、つまり海外に行ったり花を育てながらでなくても、楽しめるようなソフトを目指しているようだ。

・『DSでクラシック』では名曲をつまみ食いしつつ、気になった曲の詳細を画面で調べたり、関連する別の曲を検索したりできる。流しっぱなしにする……時々画面を触ってロングバージョンを聞く……蘊蓄を読む……収録CDを調べる……といった具合に深入りしていくわけだ。iPodとは違うデジタルプレイヤーの可能性を感じる。

・クラシックの入口にいる人には本体ごとプレゼントしたい。クラシック以外のジャンルは難しいかもしれないが、今後、個々のアーティストが配信を前提に楽曲を書くようになるとき、アルバムに当たるものはこういう、ゲームのパッケージに近いものになっていくのではないかと思える。

・今DS市場では実用ソフトも売れている。バブル期に流行った「マルチメディア」と違うのは、ゲームクリエーターがしっかり関わって、ゲームの作り込みのノウハウによって作られていることである。今この場所でタイトルを充実することには大きな意味がある。そのうちDS内蔵の携帯電話が出たらiPhoneに勝てるかも。

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7月12日「初めて遊ぶドラクエに、推奨」

・『ドラゴンクエストソード 仮面の女王と鏡の塔』。これもスクウェア・エニックスのタイトルだ。Wiiリモコンを剣に見立てて振って戦う。立体空間の全方向から襲いかかってくるモンスター達を、剣を上下左右そして斜めに動かしてずばずば斬っていく。気持ちいい。

・アクションの快楽だけではなく、RPGとしての操作性の画期的なほどのわかりやすさにも注目しておきたい。主人公の目線で、指さした方向に歩き指さした人に話しかけるわけだ。そして登場人物は声を出してしゃべる。もしかしたら歴代のドラクエシリーズの中で最もとっつきやすいんじゃないだろうか。

PROFILE

渡辺浩弐
渡辺浩弐
作家。小説のほかマンガ、アニメ、ゲームの原作を手がける。著作に『アンドロメディア』『プラトニックチェーン』『iKILL(ィキル)』等。ゲーム制作会社GTV代表取締役。早稲田大学講師。