第331回

10月10日「スポーツからフィットネスへ」

・幕張メッセにて、「任天堂カンファレンス2007.秋」。ホールで岩田聡社長や宮本茂専務から今後の戦略が具体的に発表された後、体験スペースでWiiとDSの新作ソフトがショウイングされた。
・任天堂はネットワーク戦略を進めている。Wiiの接続率は現在4割ほどだが、NTT東西とジョイントしてコールセンターを開設、ブロードバンドへの切り替えと、回線とWiiの接続を同時に、一気に進めるという。どんなに便利になっても安くなってもインターネットを使う気はない、という層がかなりの割合で存在する。ゲーム機をきっかけにしてそういう人達までをオンライン生活に引き込んでしまおうというわけである。『モンスターハンター』の最新作「3(トライ)」をWiiに獲得したことも含め、任天堂はいよいよ本気でソニーの領域に踏み込みつつあると言えよう。

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・映像だけでなくお試しソフトがダウンロードできる「ニンテンドーチャンネル」など、ネットコンテンツの充実に注力。「Wii ウェア」として、過去のソフトだけではなく新作ソフトのダウンロード販売もスタートする。
・FFCCシリーズの『小さな王様と約束の国』や、シューティングゲームの傑作『スターソルジャー』の系譜『StarSoldierR』などが発表された。ここは若いクリエーターの実験的な作品の他、カルトシリーズの外伝的作品に向いている場所のようだ。DSの電子出版的タイトルも、将来的にはこのインフラから配信されるようになるのではないだろうか。
・『StarSoldierR』はオンラインでタイムアタックを競えるようだ。これは燃えそう。デモをやっていたのはもちろんあの人!

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・Wii新作で注目は『スーパーマリオギャラクシー』『大乱闘スマッシュブラザーズX』『マリオ&ソニック AT 北京オリンピック』など。『Wiiミュージック』(仮)は多人数での合奏をデモンストレーションしていた。ゲームの初心者にも熟練者にも、そして楽器の初心者にも熟練者にも楽しめる音楽ゲームだ。

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・『Wiiフィット』(12/1発売、¥8,800)は、開発してるうちにすっかりマッチョになった宮本茂氏が自らデモ。Wii本体に無線でつなげる圧力センサー「バランスWiiボード」の上に乗って画面を見ながらトレーニングや健康管理を行なえるものだ。

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・これ、実際に体験してみたらかなり衝撃的だった。ボードの上で重心を動かすとそれが画面に反映される。重心から姿勢を確認し、それをチューニングしていく。バランスを維持しながらヨガのポーズや筋トレを行ったり、また全身を動かして重心を移動させることによってキャラクターを操作し、サッカーやスキーを楽しんだりする。
・そこに立つだけで楽しい。これは究極の一般性である。そこから、ゲームが始まる。フィットネスの基本を「体のバランス」に置く考え方に僕は賛同する。以前書いたことがあるが僕は左右非対称のスポーツはすべからく健康にはよくないという考えを持っている。だから主に腕立て伏せや相撲をやっている。ジョギングも円周トラックは体がねじれるから嫌で、都内で唯一の長距離直線コースである水道道路を走っている。
・しかしこのゲームなら、体がぼろぼろになるまでやってもいいと思えるのだ。

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2007.10.12 |  第331回~

PROFILE

渡辺浩弐
渡辺浩弐
作家。小説のほかマンガ、アニメ、ゲームの原作を手がける。著作に『アンドロメディア』『プラトニックチェーン』『iKILL(ィキル)』等。ゲーム制作会社GTV代表取締役。早稲田大学講師。