第335回

11月2日「星を観る者」

・『スーパーマリオギャラクシー』プレイ。「星の王子さま」が住んでいるような小さな星の上をぐるぐる動き回る感覚が衝撃的。3Dかつ空間が宇宙にまで広がっているという設定について、「重力方向の自由度」をポイントにしたことが勝因だと思う。

・重力によってたがをはめられている僕らの意識を解放してくれるのである。宮本ゲームはそのうち人類を悟りに導いてしまうのではないだろうか。

・任天堂ゲームは「現実にはない現実感」を追求していく姿勢を明確にしている。一方PS3は家庭用スーパーコンピュータとしてとことん精緻なるシミュレーションを突き詰めていく場として機能していくことを予想する。

11月3日「星の子」

・井上雅彦さんが主宰されているホラーアンソロジー・シリーズ《異形コレクション》の星新一トリビュート企画『ひとにぎりの異形』に寄稿させていただいた。

・星新一氏についてどう考えているか聞かれることがとても多いのだけど、今まで答えたことは一度もなかった。星氏の作品群に対する思いはできれば作品であらわしたかった。今回、井上さんのおかげで「死ぬまでにやりたい10のこと」のその7.が、叶ったことになる。

・この作品が僕のショート・ショートのちょうど500本目だった。長編が一段落ついたところだし(パンドラ早く出ないかな)、またどんどんショート・ショートを書こう。

11月4日「新しい文化圏として」

・組曲ニコニコ動画「中国語で歌ってみた」マッドで人気の台湾少女、エリリン・オブ・ジョイトイさんに電話してみたよ。あのセンスは子供の頃から日本のアニメを見まくって鍛え上げたものらしい。そういう人が台湾には結構いるのである。そしてニコニコ動画の「新しい放送局」としての可能性は全アジア視点で読み取るべきだと思った。ここを著作権特区として活用しようなんて動きは業界にはないかなあ。

・さて、プラトニックチェーン(ショートショート集)の中文版『柏拉圖之鏈』が届いた。良い評判を頂いているようで、嬉しい。ショートショートの人気は、国によってばらつきがあるようだ。ちゃんとマーケティングしてみようかな。

・表紙は台湾のイラストレーターさんの描きおろしだそうだ。レベル高い。

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PROFILE

渡辺浩弐
渡辺浩弐
作家。小説のほかマンガ、アニメ、ゲームの原作を手がける。著作に『アンドロメディア』『プラトニックチェーン』『iKILL(ィキル)』等。ゲーム制作会社GTV代表取締役。早稲田大学講師。