いまだに日本を覆う“敗戦後遺症”はアメリカ大統領選挙でも露呈した(上)
「アメリカが日本の憲法をつくった」
アメリカ大統領選挙のさなか、現職のバイデン副大統領からすごい発言が飛び出した。クリントン候補の応援演説のなかの発言で、「日本に核兵器がもてないようにアメリカが日本の憲法をつくった」というものだ。民主党の重鎮で歴史と法律を学んだバイデンは、トランプに対して、揶揄するように「学校で習わなかったのか」とまでいった。 日本の核兵器所有までを口にするトランプは、日本に対して「在日米軍基地の費用負担増大」を主張。トランプはアメリカ国民の税金がアメリカ以外の国の防衛に使われているのはおかしい、と述べている。財政赤字抑制策の一環とはいえ、日本の米軍基地経費負担の実態を知らないままトランプが発言していると批判する識者は多い。 移民政策についても人種差別的な発言を繰り返し、糾弾されてもやめないトランプ。人権を重視するアメリカでは、公の場でこのような発言をする人間は社会的に抹殺されてもおかしくない。にもかかわらず、トランプは共和党の大統領候補にまで上り詰め、民主党候補のクリントン国務長官との一騎打ちに臨もうというのだから驚く。日本の反応も歯切れが悪い
そんなトランプから日本の核兵器云々といわれるのは、対米従属から独立を目指したい保守派日本人からしても、有難くはないだろう。同様に、バイデン副大統領の発言については、たとえ、日本の憲法は米国製と考えている人からしても、ここまであからさまに本音を言われると、少し白けた感じがするのではないか。 一方、日本のリベラル派はこれまで、「憲法制定過程で日本は関与した」「戦後70年、日本はこの憲法を使ってきており、すでに日本人のものとして定着している」という2本立ての主張を繰り返してきた。当然、民進党は岡田代表(当時)が、バイデン発言に対しても、同様の批判をしたが、この問題で日米間で議論になることはなかった。対等とはほど遠い日米関係
バイデン、トランプ、2人のどちらの発言も、どこか「上から目線」の感じが漂っていた。アメリカのエスタブリッシュの間では常識的なことであっても、公の場で口に出すのが憚られる「日本国憲法はアメリカ製」という本音。それを聞かされた日本人も、バツの悪さを抱いてしまう。 日本側からすると日米関係は特別な関係という意識が強い。だが、戦争に勝ち、占領し、日本が独立した後も日米安保条約のもと、日本に基地をおいて日本を含んだ極東防衛を担うアメリカ側からすると、現在でも日本をコントロール可能な国として見ていてもおかしくはない。 外交交渉においても、ホテルに盗聴器を仕掛けるだの、密接の交渉のなかできつい言葉で日本側をなじる場合もあるなどの噂があるが、日本がアメリカの部下(属国)であるかような振る舞いが、時として表に出ることがあるようだ。アメリカは日本に何をしたのか
戦後の日本はアメリカとどう付き合うのかが最も大きな問題だった。政治的には日米安保条約を交わし、経済的には戦後の復興資金の提供から、為替相場1ドル360円の維持など、日本の経済復興を後押ししてきたアメリカが、日本にとってほかの国と違うのは言うまでもない。 しかしながら、日米関係をつぶさに見ていけば、戦後から現在まで続いた、最も大切なパートナーであるというだけでは収まらない関係がある。 現在の日本にも未だに大きな影響を与え続けている根本原因については、占領期におけるアメリカの対日政策まで遡らなければならない。(下に続く)
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