学習指導要領って何?【第2回】――ゆとり教育の悲喜劇「活動あって学習なし」
経験主義教育としてのゆとり教育
教育現場では、ゆとりが有効に活用されず
(B)の「新学力観の登場」です。1989(平成元)年に改定された学習指導要領では、教科の学習内容が(A)に比べ、さらに1割削減され、小学校の理科、社会が廃止され、生活科が新設されることになりました。 また、「新しい学力観」という考え方が強調され、学習の「知識・理解・技能」よりも「意欲・関心・態度」が重視され、これまでの相対評価(成績順に一定の分布に当てはめる)を廃して、絶対評価(学習の到達目標を設定し、その達成度をはかる)が取り入れられました。 この時期には、単なる成績の分布を示す指標に過ぎない偏差値を、あたかも悪魔の指標のように捉える「偏差値一掃キャンペーン」が行われました。 このゆとりと個性重視という経験主義教育は、抑制されるどころかさらに加速していきました。学校の週5日制の完全実施もあり、「子どもたちが[ゆとり]のなかで[生きる力]を育む」という理屈付けの中で、(C)の学習指導要領の改訂が1998(平成10)年に告示されました。ここでは、教科の学習内容がさらに3割削減され、総合的な学習の時間が新設されるに至りました。 人間にとって「ゆとり」は大事ですが、教育現場では、このゆとりが有効に活用されたとは言い難い状況でした。総合的な学習といっても、教える教員側に授業方法の蓄積がなく、教育現場では「活動あって学習なし」という状況が生まれました。 つまり、児童・生徒は、なにがしかの活動を行うのですが、それが学習に結びつかないという悲喜劇が生じたのです。 (文責=育鵬社編集部M)ハッシュタグ
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