ドギーレスキュー一期一会(下)

茶色い瞳で見つめる犬

茶色い瞳で見つめる犬


捕獲大作戦

 「ヘーイ、カムバーック!」

 5、6人で追いかけますが、運動能力の高い犬はたくみにすり抜けて、戯れるように逃亡遊戯を楽しんでいます。そのうちに、まずいことに、隣家の敷地に飛び込んで行ってしまいました。

 すると、これまた悪いことに、ネアンデルタール人風の住人の男性が出てきて犬を見つけると、「うおおおお! 出ていけええええ」と叫びながら石を投げつけます。なんということでしょうか?犬が大好きで、犬を助けようとする人々の隣に、悪さをしたわけでもない犬にいきなり石を投げつける人がいるのです。私は悲しい気持ちになりました。

 どれぐらい時間が経ったでしょうか? 最後はやはりモニカさんが捕まえました。モニカさんが犬を抱き抱えたまま帰還し、事件解決です。

 「やれやれ、初日からなんてこった」

 私はなんだかがっかりして、ベンチにへたり込んだまましばらくぼうっとしていました。すると、誰かがポンとわたしの肩に手を置いたのです。

 「どうしたんだい? 元気ないじゃないか?」

 そんな声が聞こえたような気がしました。振り返ると、間近に深い茶色の丸い目がふたつ、じっと私の顔を覗き込んでいました。いつの間にか、収容されている犬の一匹が私のそばに来ていたのです。

 犬はただ黙って、私の肩に両手(前足)を乗せたまま、至近距離から私を見つめています。

 「がっかりすることはないよ、ここじゃあよくあることさ」

 まるでそんなふうに語り掛けているようでした。捨てられて殺処分間際にここに連れてこられた犬の一匹なのに、人間を恐れるどころか、見ず知らずの私に慰めるように寄り添っているのです。

 なんという種類なのか。雑種でしょうか。長めの尻尾の先が筆のように膨らんでいるのが特徴的でした。

 犬と向かい合っているうちに、優しいぬくもりが伝わってきて、なんだか幸せな気分になってきました。

一瞬の出会いと別れ

 しかし、そのやすらぎの時間も長くは続きませんでした。その犬をもらい受けたいという人が現れたのです。グリーブという、シドニー大学の近くの街に住んでいるという若いカップルでした。犬は女性に抱かれると、あおむけになったまま、固まったように身動きせず、「ん? 何が起こったのかな?」という顔をしていました。

 「いい子ねえ、ベッドで一緒に寝るのよ」

 女性が満面の笑みで犬を抱きしめたまま話しかけます。私は傍らに立ったまま、犬の少し戸惑ったような表情を見つめていました。

 そして犬はドギーレスキューを去っていきました。

 なんて短い、一瞬の出会いと別れ。それでいて、こんなに印象に残った犬はいません。これが本当の一期一会ですね。

 今頃あの犬はどうしているでしょうか。あの茶色い瞳で何を見つめているのでしょうか。幸せでいて欲しいと心から願っています。

 慰めてくれてありがとう!名前も知らないブラウンアイズの犬!

(文:山岡鉄秀)

山岡鉄秀(やまおか・てつひで)
1965年、東京都生まれ。中央大学卒業後、シドニー大学大学院、ニューサウスウェールズ大学大学院修士課程修了。2014年、オーストラリアのストラスフィールド市で中韓反日団体が仕掛ける「慰安婦像設置」計画に遭遇。子供を持つ母親ら現地日系人を率いてAJCN(Australia-Japan Community Network)を結成。その英語力と交渉力で、「コミュニティの平和と融和の大切さ」を説き、非日系住民の支持を広げ、圧倒的劣勢を挽回。2015年8月、同市での「慰安婦像設置」阻止に成功した。現在、公益財団法人モラロジー研究所道徳科学研究センター人間学研究室研究員。AJCN Inc.代表。著書に『日本よ、もう謝るな!』(飛鳥新社)、『日本よ、情報戦はこう戦え!』(育鵬社)がある。

日本よ、情報戦はこう戦え!

オーストラリアで慰安婦像設置を阻止したキーマンが、 中韓の嘘を暴くとともに、国際世論を味方につけて、 国際情報戦に“勝つ"方法を伝授する。





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