日本を本当に豊かにするためのプロジェクト④

高速道路

河川整備によっても都市は繁栄した

 前回までの議論は、インフラが文明社会の「イノベーション」を導き続けている以上の議論は、インフラがスープラの「イノベーション」を導き続けていることを意味している。  そもそもイノベーションとは「革新・改革・刷新」と訳されるが、より詳しく言うなら、革新する、改革するという「innovate」の動詞の名詞形であり、かつ、この動詞は「in」と「novate」という言葉から構成されている。  ここで、novateという言葉は「新しくする」(新しいもの=nove、化する=ate)というもので、inは「内部」という意味である。  つまり、ある対象を、表層的に新しくするというよりは、その内部から新しいものにする、という趣旨である。  すなわち、より深い部分での構造変化──それこそがイノベーションなのである。そして下部「構造」であるインフラが、私たちの社会の文化、文明という上部「構造」を決定付けている以上、インフラの整備こそが我々の文明社会それ自体のイノベーションを導く最大の契機なのである。  例えば非文明社会から文明社会へ、そして、前近代社会から近代社会への社会構造のイノベーションはいずれも、交通インフラや河川インフラによって導かれたものなのである。  ここで、そのインフラによるイノベーションは、政治思想や農業や生産、軍事等の技術によって導かれたイノベーションよりも「より深いイノベーション」だという点を改めて指摘しておきたいと思う。  そもそも政治思想や各種技術はいずれも、インフラに決定的影響を被る「スープラ」の一部を構成するものに過ぎない。  思想や技術もまた社会に大きな変化をもたらす巨大な力を秘めているが、その思想や技術それ自体も、その「土台」にあるインフラによって決定付けられるものなのである。  そうである以上、「国土」の構造を改変するあらゆるインフラ・プロジェクトは、比類なき巨大なイノベーションを我々の文明社会にもたらし続けているのである。

「スープラ」と「インフラ」の間の無限循環

 ただしインフラ・プロジェクトそのものは、土木技術の水準に支配的な影響を被るものである、という一点は急いで付け加えておかねばなるまい。  例えば江戸や大阪の河川事業は、そのための土木技術が不在では達成しようもないものだったし、近代文明を支える高速道路や新幹線もまた、それらのための土木技術が不在では到底形成することができない。  同時に、如何かなるインフラ・プロジェクトを行うのかは、「政治」プロセスに支配的影響を受けるものである。  そもそも、江戸や大阪の河川事業は、徳川幕府(政府)によって主導されたものであるし、今日の道路、鉄道、港湾、河川の各種プロジェクトも、現政府によって主導されている。 藤井聡著『インフラ・イノベーション』(育鵬社刊より) 著者紹介。1968 年奈良県生まれ。京都大学大学院教授(都市社会工学専攻)。第2次安倍内閣で内閣官房参与(防災・減災ニューディール担当)を務めた。専門は公共政策に関わる実践的人文社会科学。著書には『コンプライアンスが日本を潰す』(扶桑社新書)、『強靭化の思想』、『プライマリー・バランス亡国論』(共に育鵬社)、『令和日本・再生計画 前内閣官房参与の救国の提言』(小学館新書)など多数。
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