世界文化遺産から読み解く世界史【第72回:イスラム教モスクがキリスト教会に――コルドバのメスキータ】

コルドバのメスキータ

コルドバのメスキータ

イスラム教からキリスト教へ

 コルドバの歴史地区に行くと、メスキータという大聖堂があります。メッカのモスクとともに最大の規模を誇り、2万5千人の信者を収容することができ、内部には千本以上の円柱が立っていました。しかし、このモスクがレコンキスタの後、カトリックの聖堂に転用されて、1523年にはゴシック様式の祭壇を持つ大聖堂となったのです。  これを見ると非常に奇妙な感じがします。イスラム教の礼拝所が、キリスト教の礼拝堂に変わっているのです。よく見ると、赤と白の縞でかたどられた馬蹄形のアーチがあります。  このアーチはイスラム教独特の様式なのですが、ヨーロッパのロマネスク様式にたいへん大きな影響を与えているのです。コルドバの文化遺産を見ると、そういう起源や変遷がよくわかるのです。キリスト教に転用されていても違和感がないのは、実はロマネスク様式の建築で見慣れているからなのです。  つまり、この馬蹄形のアーチは、キリスト教建築がそのロマネスク様式の半円アーチで、イスラム教の建築を模倣していたということなのです。この影響の強い美術をモサラべ美術と呼んでいます。  しかし、キリスト教における変化は、そこに人物像を加えたこと、聖像を加えたことです。スペインの文化遺産からは、最初はイスラム教だったものが、キリスト教に変わっていったプロセスがよくわかって興味深いものです。 (出典=田中英道・著『世界文化遺産から読み解く世界史』育鵬社) 田中英道(たなか・ひでみち) 昭和17(1942)年東京生まれ。東京大学文学部仏文科、美術史学科卒。ストラスブール大学に留学しドクトラ(博士号)取得。文学博士。東北大学名誉教授。フランス、イタリア美術史研究の第一人者として活躍する一方、日本美術の世界的価値に着目し、精力的な研究を展開している。また日本独自の文化・歴史の重要性を提唱し、日本国史学会の代表を務める。著書に『日本美術全史』(講談社)、『日本の歴史 本当は何がすごいのか』『日本の文化 本当は何がすごいのか』『世界史の中の日本 本当は何がすごいのか』『世界文化遺産から読み解く世界史』『日本の宗教 本当は何がすごいのか』『日本史5つの法則』『日本の戦争 何が真実なのか』『聖徳太子 本当は何がすごいのか』『日本の美仏50選』『葛飾北斎 本当は何がすごいのか』『日本国史――世界最古の国の新しい物語』『日本が世界で輝く時代』(いずれも育鵬社)などがある。
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