渡辺浩弐の日々是コージ中
第380回
9月17日「マンガも共有サイトに」
・「ComiComi」というサイトが面白いよ(僕もほんの少し関わっているので以下やや手前味噌な発言になることご容赦)。
http://www.comibook.com
・一言でいうとマンガの投稿・共有サイトであり、アップロードされたページに、ニコニコ動画のようにどんどんコメントを書き込んでいくことができる。台湾の出版社・全力出版が開設したもので、これまでのところは台湾クリエーターの作品が盛んにアップされている。西尾維新作品のイラスト等で日本でも知名度の高いVOFAN氏の作品もたくさんあったりする(本人がアップしているのである)。
・日本語のインターフェイスもあるので日本のクリエーターも、プロもアマも活用してみてはいかがだろう。もちろんマンガ以外の、たとえば絵とか写真とか文章をアップしてもいいのだ。コメント機能をうまく生かして工夫することによっていろいろ面白い形のプレゼンテーションができそうだ。
・全力出版社では、「ComiComi」を始めるにあたり自社の雑誌「月刊挑戦者」を休刊にしてしまうことを決断している。雑誌をデジタル化してオンライン配信に切り替える、という事例はこれまであったが、これは雑誌に代わる「場所」として共有サイトの運営を始める、というわけである。コンテンツ側、クリエーター側からのニーズによる戦略なのだ。この点が非常に大きいと思う。
9月18日「南下」
・沖縄にいる。コーヒーの勉強だってば。沖縄で実際にコーヒーを栽培しているところがあるが、高級品少量生産にとどまっているようだ。最適の場所にまとまった土地を確保するのは物理的にも経済的にも困難のようだ。うーむ。
・最近は中国南部や台湾あたりのコーヒーもとても評判がいいらしい。もう少し南下してみようかな。んなことやってるうちに結局ブラジルまで行ってしまったりして。
9月19日「さらに南下」
・んなことを考えてた矢先、講談社BOXの太田さんから台湾取材に行きませんかというメール。こういうことってタイミングがあるんですね。すぐ行くことにした。
・いや取材テーマはコーヒーのことではないんだけど。『ファウスト』@最新号の中国特集に続ける形でさらに視野を広げ、アジア全域に拡大しているオタク文化の状況を、各地の現場を回ってリアルにマッピングしていきたい、とのこと。そこで、まずは台湾へ、というわけ。
・「ComiComi」運営元の全力出版・リン社長とも、会えることになった。やった!
第379回
8月30日「パンドラの筺、開く」
・KOBO CAFEについて、講談社BOXの雑誌『パンドラ』の次号で、ちょっと変わった形でフィーチャーしてもらえることになった。あの空間の実体を初めてきちんと明かす記事になりそう。カフェを支えて下さっている作家の皆様からの協力も頂けるそうだ。ありがたい。
・もちろん僕もかりかり書いている。10月頭には出るらしい。
9月9日「ARGとしての小説」
・「ユビキタスエンターテイメント事業創造コンソーシアム」に招かれて講演。慶應大・武山政直教授の研究室と民間企業との産学連携で、ARG(代替現実ゲーム)をテーマにした研究会らしい。こういう動きが始まっているんですね。
・ARGについては前にちょっと書いたけど、ネットをはじめとしたインフラ上に情報を出し続けることにより、現実世界をゲーム空間にしてしまうエンターテイメント手法だ。僕の小説『iKILL/ iKILL2.0』等の仕掛けがARG的であるということで呼んで下さったようだ。自分の作品を新しいフレームで捉え直す良い機会になった。
・受講者は武山先生のところの学生さんが多いと思っていたら、有名企業や大手代理店の、プロデューサーの立場の方々がずらり列席していて驚いた。質疑応答では、ビジネスモデルについての話がメインになった。コンテンツの主体をデジタル化してネットに載せる以上、収益方法は全くパラダイムを変えて設定する必要がある。そこで「投げ銭」や「お布施」のような概念を真面目に考える必要がある、というようなことから、バーチャルでありリアルであり、結果、聖地としての存在感を持つに至っている「中野ブロードウェイ」という場所の価値についての話に。
9月10日「動画時代のインディーズ戦略」
・やずや・やずや氏@「ゼロアカ道場」による渡辺インタビューの動画が、ユーチューブに上がってるよ。渡辺の映像は1992年の「聖PCハイスクール」以来だし(?)、KOBO CAFEの動画って、本邦初公開かも。
・もちろんこれはほんの一部分で、フルバージョンは同人誌に掲載して頂けるわけだ。面白いですね、こういう戦略。やずやさんのブログを要チェックのこと。
http://d.hatena.ne.jp/yazunami
第378回
8月25日「これは凄い映画です」
・『バットマン・ダークナイト』。もちろん主役はジョーカー! 悪者の設定に、この10年ハリウッドは苦心惨憺していた。巨億の富、とか、世界征服、とか、そういう目的が無効になってしまっていたからだ。ここに、意味もなくただ悪い、という究極の敵役が出現してしまった。
・そんな存在に相対する時バットマンも、ただ清く正しく美しい正義の味方では、いられないのだ。正義が悪を喚起してしまうことの矛盾。ヒーロー映画にあるまじきこのテーマを軸に、クリストファー・ノーラン監督はシリーズの設定や映画的なお約束までぶっちぎって、最初から最後までひたすら疾走する。
・ものすごく重いテーマが、ものすごく速いテンポで進んでいくわけで、その映画としての仕事量は過去最大級である。観る前に体調を整えておくこと、それから、観た後に一人でぼんやりする時間を取っておくことを、お薦めする。
8月28日「これは良いゲームです」
・『AFRIKA』発売。PS3発売前から映像だけが公開され、話題となっていたゲーム。サバンナの野生動物達が実にリアルに再現されている。
・眺めて楽しむ「CG技術見せびらかしソフト」かと思っていたのだが、それだけではなかった。ゲームとしてもきちんと仕上げられている。動物達にうまく近寄り、シャッターチャンスを捉えて写真を撮る。動物との距離感を楽しむというか。これがなかなか奥深くてハマれるのだ。指示通りの写真を撮ることに一生懸命になるのも、全ての動物を網羅しようとがんばるのもいいが、ただふらふらと歩き回り、動物を見つけ、カメラを構えてじっと待つ時間が、とても愉しい 。
・むしょうにサファリ行きたくなるなぁ。サファリパークでもいいか(写真はゲーム画面ではありません)。
8月29日「自分より長く生きる自分とは」
・小説『吐田君に言わせるとこの世界は』の単行本化が決定したので、さらにしつこく推敲している。悔いの残らない形で世に出したい。