俺の夜
かつては関内のキャバから曙町の箱ヘル街。東南アジアの女たちが袖を引く黄金町から日の出町のガード下を流すと財布がカラになったものだ。服についた香水の匂いを落とすため、野毛で焼き鳥の煙を浴び、朝まではしご酒……。
都心から電車でわずか30分ほどなのだが、おおらかな空気。これが実に心地いい。
同行のO氏によれば「幕末からの港町ゆえ、新しいものが入り、そして根づく街です。夜遊びで言えば、大阪や名古屋で流行ったちょっと“やんちゃな遊び”が入ってくる。東京ではこの“やんちゃ”を入れてしまう、オープンさが疎まれるんですよね」とのこと。
一面の座敷ここは海の家か?
「それでは東京ではちょっとあり得ない、テンションの高い店に行きましょう!」
そう言って連れていかれたのは横浜駅西口、酔客溢れる商店街の奥の奥。雑居ビルをエレベーターで上がると、一面の座敷。そこには水着の女のコがウロウロ。この景色、既視感があると思ったら、真夏の海の家だ。
キンキンに冷えたジョッキを持った水着ギャルが闊歩する様子は、某ビール会社のポスターのよう。それを目で追う、赤く茹で上がった先輩は、ピン客ではないか!
早速生ビールを注文。すると2人の水着ギャルがやってきた。
「乾杯コールをさせていただきます! 今夜は一丁盛り上がっていきましょう。か~んぱ~い!」
黄色い声とともに、激しく打ち鳴らされるタンバリン。ジョッキを天高く掲げると、かの先輩もチューハイを掲げている。乾杯コールをしてくれたあいこちゃん(18歳)と、りかちゃん(18歳)によれば、ほぼ毎日来て「一人宴会コース」を注文する超常連さんなんだとか。店のあちらこちらで「コール」が展開されている。女のコ2~3人が取り囲み、ポテトを振ったり、グレープフルーツサワーを搾ったり、他の卓を眺めるだけで楽しい。あいこちゃんによれば、他の卓のコールに合わせて楽しんでもルール違反ではないという。
それを見て我々も生グレープフルーツサワーを時間差で注文。1コ搾ると、今度は別の女のコがやってきて、「生搾り! 生搾りっ! 愛情込めてギューギューギュー!」などと実に可愛いコールで搾ってくれる。
「いや~、この完全水着ルックは都心ではもはや絶滅していますからね。東京はすぐ牙を抜かれちゃうから、ダメなんですよ!」
サワーをひと息で飲み干したO氏が饒舌に解説する。しかも、矢継ぎ早におかわりしたサワーの“製作現場”にかぶりつくという超やんちゃぶりだ。
「一昨日まではイベントでセーラー服にTバックだったんですよ。次は絶対に来てね!」
後ろ髪をひかれながら、店を後にする。ハマはまだ宵の口、久しぶりに伊勢佐木町のパブでも覗いてみようか……。
【水着居酒屋の遊び方】
・取り分け系メニューを頼め!
ぶっかけチャーハン(900円)やラーメンサラダ(790円)など、大皿料理を注文すれば、女のコが小皿に取り分けてくれる。その間にいろいろと質問したりコミュニケーションを図るのだ
・生搾りドリンクを注文!
乾杯ビールのあとはすかさず「生搾り系サワー」を。コールとともに、女のコがか細い手でグイグイとレモンやグレープフルーツを搾ってくれる。そのけなげな姿には誰もが感涙モノだ
・ゲームメニューで心をツカめ!
5本のチョコ棒を水分を取らず、30秒以内に完全に飲み込めば店のメニュー全てから1品がタダになるという「モグモグチャレンジ」(500円)。勇敢な挑戦には女のコが必死に応援してくれる
【居酒屋なつこ】
神奈川県横浜市西区南幸2-12-10 ITOビル4F 電:045-317-7250 17~翌5時(土日は15時~)。725円~(60分・飲み放題。17~18時。土日は15時~)。10~20代まで。女のコは常時10人程度出勤 http://y725.jp/
撮影/渡辺秀之 協力/O氏(夜遊びガイド)
スナックとキャバクラの違いって何?――スナック愛好家を自任してから、幾度となく投げかけられてきたこの手の質問。「キャバは女のコを口説く場所、スナックは女のコとの会話を楽しむ場所」なんて回答も、「ママの目を盗んでスナック嬢としけ込もう」とする男たちのバトルを幾多となく見てきただけにチト弱い。風営法の種類、料金設定の違い(チャージ制か時間制)など回答群は多いが、いまだに答えは見つからないままだ。
思い悩むスギナミの耳に飛び込んできたのは、「スナックとキャバクラのいいとこどり」という触れこみで増殖中の “スナキャバ”なる新業態。システム的にはキャバクラと同じだが、隠された“スナック色”を見つけることで、この問いに答えが出せるのかもしれない。早速、調査に向かった。
格安料金でも美女がマンツーマンでつく
まず訪れたのが神田にある“スナキャバ”の先駆け的存在ともいえる「EGOIST」。瀟洒な店内には、ドレス姿の女性たちが百花繚乱。愛嬌のある笑顔を振りまきながら、一ノ瀬愛ママ(28歳)がエスコートしてくれた。
「スナック並みの低料金で飲めることがウリです。ボーイさんを置かずにキャスト全員で店づくりをしてるから、このお値段でできるんです」
オールタイム45分3500円、指名料1000円と破格の料金。
「もちろん女のコのレベルも高いですよ」と言って愛ママが席に呼んだのは、昼は会社勤めのミアちゃんと巨乳美女の愛結ちゃん。彼女たちに限らず、総勢27人のキャストの9割は昼職との掛け持ちだ。
「今夜はパーッと飲みましょ。でも昨日は飲み過ぎて、ヒザを打っちゃったけど(笑)」
そう言ってドレスの隙間からアザを見せる愛結ちゃん。気取らない魅力は会話、仕種のそこかしこに表れる。小腹が空いたと注文すれば、近隣の飲食店からデリバリー。出前の手数料はかからず、これも懐に優しいスナキャバ設定だ。フードの持ち込みも無料で、隣のお客さんが「餃子を買い過ぎちゃったから、そっちでも食べてよ」と、ボックス仕切りのないスナックコミュニティを堪能できる。
【EGOIST】
東京都千代田区内神田3-22-10 ハチヤビル2F
電:03-6206-4033
営:20時~ラスト
休:土日祝
料:45分 3500円(税・サ込み)
神田駅北口から徒歩30秒。フードの持ち込み料無料 HP(www.club-egoist.com)